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第四十二話 心を開かない者

「……とまあ、こんな所だよ」


 私は座る全員にプレゼンの如く向き直る。

 今現在私は昨日カラロッタから手に入れた新情報を皆に伝えている。


 一つは王の名がミヤビ。姓は知らないらしい。

 黒を基調とした姫のような姿……おそらくこの前見たゴスロリの人だろう。


 二つ目は私がスキル『致死毒』を手に入れたこと。

 その名の通りどんなに少量でも死に至る毒を排出する。だが……これは基本使わないことにした。どんな経由であろうとその毒が伝わる可能性が有るのだ。

 

 正直言ってここまでリスクの高いスキルは使えない。こちらにおいてはむしろ期待外れだった。


 私はそんなことを考えながら椅子に腰を下ろして顔を突き合わせるようにする。


「で、こっからが作戦。今度はエブルビュートを超えて北側にあるミヤビの国、メルヘリックという国が次の目標だ。そしてそのミヤビのスキルが……『時空転移』」


 私を除いた全員がなんだそれは、とでも言うような不思議そうな顔をする。

 まあそりゃそうだろう。どこから転移させる物なのか、それは現世からである。


 ミヤビはそれで銃だとか電話やらを持ってきているらしい。しかし電話の方は回線などあるわけもなく一部の人間が独自の方法で使っているらしいが。


 でもそれを説明するわけにはいかない。それは別世界、という概念をこの世界の人に教えることになるから。

 

「……どこから来ているか、それは私にも分からない。だから____」


「嘘です」


 突如フレイが私の言葉を遮って呟く。その目にはどこか普段とは違うものを感じた。

 空間が張り詰め、どこか緊張した空気が流れる。


「……え?」


「だから、嘘ですよね、それ。サツキは何か知っていて隠しているんじゃないですか?

 何か大切なことを。

 ……以前からサツキは私達とはどこか一線を引いていました。どうしてですか?自分のスキルが神様に与えられた物だからですか?それとも____」


 フレイはいきなり捲し立てるように私に聞いてくる。私は落ち着いてもらえるように言葉を遮った。


「ちょ、ちょっと待ってよ。フレイ、なんか変だよ昨日から。何があったのさ。

 別に私は____」


「どうしてと聞いているんです!私達じゃ力不足ですか!?私だって、私だって……!」


 フレイは激昂し私へ怒鳴った。歯を噛み、驚くほどに怒っていた。

 悔しさからの怒りか悲しさからの怒りか。私にはわからなかった。当惑していた。


 どうするか分からず、その場から逃げ出したい気持ちだった。だから私は椅子を蹴る様に立ち上がり。


「……サラマンダーを連れて行くよ。今回も私が単身で乗り込む」


 席を立ち上がり、扉へ向かい、外に出た。


「サツキ!なんで……なんで……!私だって……私だって辛いのに……」

 

 フレイは涙を溢していた。





 私は『神速』を使いメルヘリックへ向かっていた。走り抜け、景色は新幹線よりも速く入れ替わって行く。


「……あんたいつもより速いじゃない?そんなにフレイの言葉が気になるの?」


 サラマンダーは私の懐から少し明るく聞く。

 確かにフレイの言っていたことが原因で私も走りたい気持ちなのかもしれない。


「まあね、ちょっとだけだよ」


「あんま自分に嘘をつくのは良くないわよ。ちょっと後悔してるんでしょう?」


 私はサラマンダーに見抜かれ、少しだったが笑いをこぼす。


「はは……バレちゃったか」


「分かってなきゃここまで来てないわよ。……確かにあんたの身体のマナ構造は異常ね。正直言って気持ち悪いレベルよ」


 サラマンダーが身体についていじって来るので私は少し苦笑をした。


「私、フレイとは会ってまだ少しだけども、多分あの子が怒っているのはあんたが心を開いてくれていないからじゃないかしら?」


「え……?ボディタッチなんてよくやるし気は楽にしていたけど?」


「そういう事じゃないのよ。謝る、仲良くする、気楽に友達みたいにする。

 あんたがやってんのは全部社交辞令なのよ。表面上だけで心から許してなんかいない」


 私はそう言われてどう返せば良いか分からず黙り込んでしまった。


「世の中にはね、仕事と割り切って人間関係を疎かにする人間がいるわ。でもサツキ、今のあんたってそれとなんら変わりは無いわよ」


 サラマンダーの言葉を聞き、私の脳裏に古い記憶が蘇る。

 小さい頃……。私は劇の発表会で皆を取り仕切っていた。確かに全員が適役につけた。

 劇は成功して、先生や親にもたくさん褒められた。でも……。


『俺は主人公がやりたかったのに!なんで木なんかにしたんだよ!』


『私だってお姫様なんかやりたく無かったわ!なんで沙月ちゃんは皆のやりたいことをやらせてあげないの!?』


 私は同級生の心に寄り添えていなかった。私が作ったのは全員が黙ってやっていれば勝手に成功する、機械的なシステムだったのだ。


 その後は友達との間には亀裂が入り、私は次第にそういうシステムを作るプロのような立ち位置にいた。


 私は、あの頃から変わっていないのか……?

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