第四十一話 拷問
私は牢屋の扉を勢いよく開ける。開けたときの音に少し驚いたのかカラロッタは部屋の隅にいながら身を竦ませる。
食糧をあまり与えていなかったために少し痩せているカラロッタを見て私は笑みを浮かべた。
「やぁやぁ。そろそろ情報を吐く気になったかな?私も手荒な真似はしたく無いからね」
私が陽気に声をかけると、カラロッタは目をつり上げ私を睨みつける。
「誰が吐くものか……!どんな苦難も耐え抜いて見せる!」
私はその言葉に対し、下卑た笑みを浮かべる。
「そうかい。だったらこうするしか無いねぇ……」
そう言いながら私は右手に持ったそれをゆっくりと前に出した。
「はふっ……はむっ……」
カラロッタは一心不乱に私の作ったカツ丼を食べていた。
やはり王城。日本の食べ物ぐらいなら余裕で作れるな。
「なるほど……?君のところの王様は雅という名前なんだね。それで君のスキルは『致死毒』……まあエージェントとしてはそれなりのスキルだね。
にしても、自分の部下がまさかカツ丼で堕ちちゃうとは思っていなかったろうねぇ……くくく……」
私がそんな事を言っていると、持っていた箸を私に突き出しカラロッタは激昂する。
「何を言うか!私は決して屈しはしない!ただ等価交換として……!」
「そう……残念だなぁ。もし君が屈服宣言でもしてくれたら二杯目をあげようと思ってたんだけど……」
私はカラロッタを横目で見るようにして二杯目のカツ丼を出す。
「あ……その……」
それを見た瞬間、カラロッタは勢いを削ぎ下を恥ずかしそうに向く。
うん、女騎士ではないけど生きているうちにやりたかったことができたな。
私はそこで飽き足らず丼のヘリを持ち挑発するように降る。
「ほらほら……負けましたって言うだけで君は二杯目を貰える。どうするんだい?」
口元をニヤつかせながら丼をカラロッタの顔のそばに近づけ、香りが鼻に入ってくるようにする。
「あ……で、でも……私は……」
興が乗ってきたぞ。クライマックスは近い……。
「そう?じゃ私が……あー……」
私はさらに急かすように箸を出しカツを口に入れようとする。
「ま、待って!」
カラロッタの声が聞こえ、私は口へ運ぶ手を止めそちらへ向く。
「そ、その……私は……ま……した……」
「なんだって?よく聞こえないなぁ!?オラっ!はっきり言え!言うんだよ!」
私は以前聞いたセリフを真似て急かすように叫ぶ。
その声に震えながらカラロッタは顔を赤らめ目を強く瞑る。
「ま……まけましたぁ!」
その一言を言い、荒く息をついて顔を俯かせるカラロッタを見ながらニンマリと口角を上げる。
「よく言えたねぇ……ご褒美だ」
私がカツ丼を目の前に差し出すとカラロッタは一気にそれを掻き込んだ。
「ははは!ははははは!愉快だなぁ!誰か、誰かビデオ持ってきてくれ!これを雅とやらに送りつけてやる!」
私は大声で笑いながら体をそらせる。
「ははは!はは……は……」
反らせすぎて頭が牢屋の入り口の方に向き、そこにはフレイが立っていた。
フレイは死んだ目でこちらを見て、腕を組んでいた。
うーん……辞世の句でも詠むか?
「……はぁ、何をやっているんですか?」
私は自分がゴミになった気分だった。まあ反省はしてないけど。
体の反りを戻し一息ついて私はフレイの方へからだを動かす。
「……拷問さ。人間の3大欲求に働きかけるどぎついのをね」
私がそう言うとフレイはそのまま呆れたような顔もせずその場を去っていてしまった。
「あれ?ちょっとー?フレイー?」
私はフレイに呼びかけるが、声が反響して静寂が残る。
後にはカラロッタが箸を動かす音が響くだけだった。
次の日になってもフレイの態度は変わらなかった。
まさかどんだけ何しても怒らなかったフレイがここまで怒ってしまうとは……。
私は昨日と同じく会議室に出向いていた。
廊下を少し後悔しながら歩いていると、フレイの姿が見えた。
「あ、フレイ!」
私は声をかけて昨日のことを謝ろうとしたが、フレイはそのまま歩いて行ってしまった。
……どうしちゃったんだろう。
今回はボリューム少なめとなってしまいました……
次回、又は次次回に戦闘描写が入ると思いますので、ぜひよろしくお願いします!




