第四百六話 意識
「お! 起きた! じゃあ芦名、早速さっきの質問に答え、て……」
目覚めた彼に嬉々として語りかける最中だったが、私は急激に語勢を失っていき、言い終わるよりも前に沈黙へと達してしまった。それと共に、不意に彼を抱える腕を彼から離してしまい、芦名は宙に放り出され先ほどと同じように直立して見せた。
彼の表情が、明らかにさっきと違う。感情的な意味合いでの表情……ではなく、帯びる雰囲気が先ほどと比べて格段に生きているように感じられた。
……どう言うことだ……? さっきまでの彼はロボットみたいだったのに、目覚めたら、いきなりこうだなんて……。
「……どうしたんだ? 質問は取りやめにするのか?」
気付けば私は彼の顔を覗き込んで黙り込んでしまっていた。それに耐えかねたのか芦名は怪訝な顔をして私に声をかける。
私は焦り気味に、自分の気でも紛らわせるかのように半笑いで返答しようとした。
「い、いやいや! 早く答えて____」
しかし、口先まででかかった言葉を、私は喉の奥に押さえ込んで留めた。
……待てよ? 仮に今彼に君は何者か、なんて質問をして意味があるのか? 何やら変わったようではあるが、幸い質問に答える意思はまだあるようだ。……だが、いつ気が変わるかも分からない。とにかく、今は一つ一つを、意味のある質問にする必要がある……!
では、何を質問するのか。頭の中で思案し、私は一つの考えを導き出した。恐らく今最大の謎、それを解き明かす必要がある。
私が途中で黙ってしまったせいで、場は沈黙と共に重い空気が流れ出していた。主にサラマンダーが芦名を警戒する身体と思うけど。
そのような重苦しい空気を断ち割るように、落ち着きを持って、私は息を深く吸って芦名へと語りかけた。
「……質問を変えよう、芦名。先程までの君はまるでプログラムされたみたいに言動も、雰囲気も、何もかもが期待だった。まるで肉の皮をつけた人工知能と話している気分だったよ。……でも、今の君はだいぶ違うみたいじゃ無いか。正直、外で見た君同然だ。……芦名、さっきのアレは、一体なんだったの?」
私の質問に、驚く様子もなければ反応を見せる様子もない。その瞳すら全く揺れず、ただ冷徹に私を見据えているだけだった。しかし、それに私は臆せず同じように真っ直ぐとした目で彼を睨みつけた。
例えこの質問をしたせいで芦名が回答を拒否するようになったとしても……、何としてでも、これだけは聞かなきゃいけない! 素性もわからない相手に命を預ける気はさらさら無い!
そう思い、何十秒も経ったように思えた頃、不意に芦名がポツリとつぶやいた。
「……分かった、教えよう」
「……!」
彼の了承の言葉に、思わず私は身を乗り出しかけてしまうが、サラマンダーに止められてまた後ろへと戻っていった。
生唾を飲み込み、彼の返答を待つ。ふと見ると、彼のマントがないことに気がついた。
「アレは……俺の記憶だ。意識は俺が適当に作っておいた。なんてことは無い。質問されたことに対して知りうる範囲で全て教える、ただの機械だ」