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第四百五話 入れ替え

 *


「俺は……」


「……」


 芦名は、そこまで言って沈黙する。口を開き続けてこそいたが、言うことを躊躇っているのか、漏れる息づかいだけが耳へと伝わってくる。


 いきなり質問に応えなくなった……? 何かここに答えがあるのか……?


「……芦名?」

 

 沈黙を続ける芦名に痺れを切らし、私は再度彼の名を呼びかけて返事を促した。

 だが、その次の瞬間。


 唐突に芦名の首がガクンと下がった。

 それどころか、四肢も宙に投げ出しふよふよと漂い始めている。……これ……


「……え⁉︎ ちょ、芦名⁉︎ き、気絶してんの⁉︎」


 ギョッとして芦名に声をかけるが、返答は返ってこない。気付けば芦名はすでに数メートル程私達から離れつつあった。


「芦名⁉︎ 芦名ー⁉︎ ……本当に気絶してるんだけど……! なんでいきなり……⁉︎」


「ちょっと落ち着きなさいよサツキ! とにかく、あいつがどっか行っちゃわないように捕まえておきましょ!」


 気が動転して芦名へと指を指す私に、サラマンダーは喝を入れ飛んでいく。

 赤い閃光が抜けていったかと思うと、一瞬にしてサラマンダーは芦名の身体を峯で押さえ込んでくれていた。


 若干遅れながら、私も彼女の支える芦名の前にまで移動した。

 そうして、顔を覗き込んでみると。


 ……うん、やっぱり気絶している。何でかは分からないけどいきなり気絶しちゃった……。

 ……目覚めるかな? 目覚めてもらわないと困るけども……。


「……」


「……」


 沈黙のまま、二人で芦名の顔を覗き込む中。


「そおいっ!」


「⁉︎」


 私は何ともなしに芦名の顔に渾身の張り手を喰らわせてみた。

 しかし、芦名は目覚めずそれどころか私の方が打ちどころが悪く手首が痛くなってしまった。


「な、何やってんのよサツキ⁉︎」


「いや、目覚めるかなって……」


 驚愕と困惑の入り混じった声で叫ぶサラマンダーに考えていたことをそのまま伝えると、サラマンダーは何とも言えないような納得の行っていない唸り声を上げる。

 やはり納得いかなかったのか、サラマンダーが口を開こうとしたその時だった。


「ん……」


 私達のすぐ下から、息の交じった声が漏れ出る。驚愕に駆られ、考えるよりも先に私とサラマンダーの視線はそちらへと向いていた。

 もちろん、声を出したのは私でもサラマンダーでも無い。私達以外に今ここにいる人間。その声を漏らしたのは……。


「……ん、ここは……」


 少し青ざめた顔で、辺りを目で見回して独り言を呟く。

 芦名が、再び起きた。

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