第三話 私、転生しちゃいました。
「うーん……はっ!ここは……?」
目を覚ますと、私は見知らぬところにいた。
見覚えのない木々や草むら、ここは森林だと分かった。
「ほ、本当に異世界転生しちゃったんだ……!イヤッホォーウ!
これから私は異世界でウハウハな生活を送るんだー!」
体を触ってみると、髪は黒髪のままだが、とてもサラサラしている。
若干体も華奢になったような……?
池が近くにあったので覗くと、水面には綺麗なお姉さんと言った感じの人が映っていた。
もちろん私なんだろうけど……信じられない!まさか異世界転生がここまでいいものだったとは!
これからは、この姿で……!
数多の財!無数の美食!男!女!うへへ……。
っと、いけない。うっかり自分の欲望が出てきてしまった。
私の使命は転生者達を回収することなんだから……。
そんなことを考えていた時。
「キャーーー!」
突如として後ろの草むらから悲鳴が聞こえた。
ふ、不審者に思われた!?こ、ここは弁明をしないと……。
「ちょぉぉっと待ったぁ!お姉さんは別に怪しい人じゃないんだ!ただ森が好きで少しはしゃいじゃって___」
「ブモ?」
「ぶも?」
そこには、うずくまった小さな女の子一人と、豚と人を合わせたような姿をした4、5匹の怪物がこちらを見ていた。
それを見て私は顔がサーッと青くなる。
あ、これは勘違いってやつですね。無かったことに出来ないかな?
「すみません、お気になさらずどうぞ続けて!」
「えっちょ、私は!?私はどうなるんですか!?」
「私は何も知らないんだ!あとは頑張って!」
そう言いながら踵を返し、その場を後にしようとするが。
私は肩を掴まれる。
「あれ?」
そういや私今美少女だったわ。
「ちょっとごめん!見逃してくれないかな!?」
私は縛られて運ばれながらなお、助けを懇願するが、怪物達は聞く耳を持たなかった。
「あなた本当に潔いですね!何かスキルないんですか!?」
「あ、そうか!くっくっく……豚どもよく見ておけよ!『複製』!」
私は声を上げ、スキル名を言った。
しかし、何も起こらなかった。
「えっ、今何かやったんですか!?」
小さな女の子はこの状況から打開できるのかと思ったのか、嬉々として聞いてくる。
「ごめん、なんも起きないわ」
「ええ!?今できる感じでしたよね!」
「そんなことを言われても……」
思い出せ思い出せ!発動条件はなんだった?確か神様が言っていたような……。
あ、そうか!情報が必要だ!
「ねえ君!この怪物のスキルとスキルの発動の仕方ってわかる?」
私がそういうと、彼女は少し困惑しながら。
「お、オークのスキルですか?オークは基本『怪力』スキルを持っています。
マナを筋肉へあてかって、筋力を何倍にも膨れ上がらせるんです。
でもなぜそんなことを……?」
やっぱあれオークだったんだ……。まあ、これでどうにかできる!
「今度はハッタリじゃない……第一の『複製』!」
私は腕にスキルを発動する。
力を入れると、縄はブチブチと音を立てて千切れた。
「ブモ!?」
私たちを運んでいたオークは縄が千切れたことに驚いていた。
「ストレートォ!」
間髪入れず、私はオークの顔に拳を叩き込み、オークはノックダウンした。
「す、すごい……!」
私は少女の縄も千切って、おぶり、その場を後にする。
「えっ?他のオークは倒さないんですか?」
「今は脱出することが先決さ!走るよ!」
私は足に発動させ、森を疾走した。
「はっ、はっ、……はぁー。ここまで逃げれば大丈夫かな?」
後ろを振り返ると、もうオークの姿は見えなくなっていた。
「あなたすごいですね……どういうスキルなんですか?それ」
「他人のスキルを複製するスキルなんだ。
今回はオークが常時スキルを発動させていたからすぐに使えたけど。」
「なるほど……あ、そういえばあなたのお名前は?」
「私?私は沙月って言うんだ。」
「サツキ……良い名前ですね。私はフレイと申します。
何故あの森に居たんですか?」
「あー……近くの街を目指してたんだけれども、道を間違えちゃって。」
「なるほど……良かったらお供しましょうか?
ここから一番近い街だと、アセント街ですかね?」
「う、うん!できれば一緒に旅でもして欲しいんだけど…なんつって!」
「旅…ですか?」
フレイは少し困惑した顔をする。
「いやごめんね!無理な相談だよね!」
私がそうして誤魔化そうとすると。
「構いませんよ。」
「…え?」
「構いませんよ、と言ったのです。
私も遠いところに用がありますから。」
フレイはそう返事をしてくれた。
「本当!?助かるよ!」
「さ、行きますよ。日が暮れる前に街に着かないと。」
「オッケー!ご飯は何食べんの?」
「一番安い酒場ですよ。」
「そんなー!」
次の旅まで48万オウル!
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