第三百九十五話 安堵
サラマンダーが私にそう返事を返すと、私達は二人でお互いの事をジッと見つめる。
私は安堵と達成感を胸の内に覚えていた。今この手の中にサラマンダーがいてくれる、それだけで私は今この上なく至福の気分でいられる。
半ば放心に近いような状態になって穴が空くほどサラマンダーを見続けていると、その時。
「……う、ううぅ……」
「え?」
気のせいか、誰かが泣いているような声が聞こえてきた。
幻聴なのかそれとも何処かから聞こえているのかと、耳を澄ませてみると。
「うう、ううぅ……ほ、ほんとに、サツキなのね……」
その声の正体は、声を震わせて泣くサラマンダーだったのだ。
唐突に泣き始めたサラマンダーに、私は思わずギョッとしてサラマンダーへ視線を向けた。
「えぇっ⁉︎ さ、サラマンダーいきなりどうしたの⁉︎ 何かまだ痛い所とか残ってた?」
そう言い、サラマンダーの刀身から柄まで何か欠損した部分はないかと手で探り出したが、サラマンダーは震える声を何とか喋れるように声の調子をどうにか合わせ。
「い、いや……ごめんなさい。まさか……ひっく、本当に助かるだなんて思ってなくて……これであんたとも、フレイとも、ウンディーネとも……皆ともう会えなくなるって思ってたから、泣きたくなくても泣いちゃうのよ……」
しゃっくり混じりに、サラマンダーは涙声で私に精一杯言葉を返してくれた。
……そうだ、私達が行動している間、サラマンダーは一切身動きが取れずにここをずっと漂っていたんだ……。その意味を……深く理解していなかった。
私が時間ギリギリに懸けて作戦を練っている間にも、サラマンダーはずっとこの暗い中どうすればいいかも分からずに、ジワジワと死へと近づいていく思いをしていたんだ。
「……ごめん、サラマンダー。もっと、私が早く助けることができれば……」
私の言葉に、サラマンダーは呻くように泣いていた声を止めると、少ししてから私に笑いかけた。
「……ふふ、何言ってんのよ! 結局、私が助かったんだから良いじゃない! 結果オーライ、って奴よ! とりあえず帰りがてら私が何をみたか話しましょ?」
「あ……うん、そうだね!」
元気を取り戻して私を励まそうとするサラマンダーに、私も力強く頷いて返事を返した。
結果オーライ……確かにサラマンダーの言っていることも正しいかもしれない。
……でも、もし、同じようにまた行動して、その時に失敗して、誰かを失うような結果になってしまったら……。
……その時は、もう私は手遅れなんじゃ無いだろうか……。