第三百八十九話 辿り着き
「どわああああっ⁉︎」
爆風をモロに喰らい、私は一瞬にして吹き飛ばされる。神経が焼き切られているのか、痛みは今のところ感じない。
予想外に威力が強かった……! 幸い皮膚を鋼鉄に変えていたから、即死には至らなかったけど、危うく何も無い空間の中一人でポツンと自爆するところだったな……。次また超エネルギーを作る時はしっかり『万物理解』で計算しておかないと……。
とはいえ……かなり加速できたんじゃ無いか……⁉︎
強すぎる光に目を潰されたせいで周囲の景色を測る事は出来ないが、耳にする風の切る音でその速さは十分分かる。
肉体を新たに作ると、自分の心臓が高鳴っていることに気がついた。脳味噌も何故だかそれに呼応して頭蓋骨の中で膨らんでは萎み、まるで鼓動をしているようだった。
……ワクワクしているんだ……私……!
視力を失った目を作り直し、目蓋を開ける。そこには、目を輝かせるような景色があった。
「おおおお!」
光が連なって現れる線は、私を囲む光の膜となっていた。
暗く広がっていた宇宙のような風景はどこにもなく、ただただ白い光だけが私を包み込み続ける。
すごい……! というか……光が線から膜みたいになって、それでさっきの時点で光よりも速かったわけだから……これワープじゃないの⁉︎ あの宇宙船とかがやっているあのワープ! 私今やっちゃってるの⁉︎
「うおおおお! なんか楽しくなってきたあああぁぁ!」
果てのない空間へと高鳴る気持ちを吐き出すように叫んだところで、唐突に冷静な気持ちが頭をもたげて熱くなっていた私を鎮める。
いけないいけない……サラマンダーを助ける可能性を少しでも上げなきゃ……。
そう思い、マップをふと見ると。
「えぇ⁉︎」
私は思わず、今度は驚きで言葉を漏らしてしまう。
だって、そこには。
「す、凄い勢いで進んでいっている……! 痕跡にもう辿り着いたぞ……! ……あれ? というか、これ……」
マップを凝視する中、私の位置を示す点はみるみると近づいていく。
しかし、虹色に輝く痕跡についにたどり着き、後もう少しでサラマンダーのところにたどり着くところで私はある異変に気づいた。
「これ……後もう少しでって言うより……」
私の進みは、あまりにも速すぎた。
「もう一秒もしないまま着くんじゃ____」
そう言いかけたその時、すでに私とサラマンダーは同位置にすでに重なっていた。
抵抗する隙すら当てられず、私は遥か彼方へと吹き飛んでいく、と思われていたが。
「……『万物理解』ぃぃ!」
突如として私の進む方向へと極光が現れ、すぐさま大量の光と爆風を撃ち放つ。
空気に僅かに含まれていた粉塵が巻き起こり、その中で私は微動だにせず、止まっていた。
「……ふう。ギリギリだったけど、進む力を打ち消せた……」
一息つき、私は一時の窮地を乗り越えたことにその場で安堵していた。
しかしまた自分の使命を思い出し、緩んでいた身体を引き締め。
「あっ……! サラマンダー! マナが途切れる前に来れて良かった……! すぐに回復させてあげないと……!」
そう口にし、私は身体ごと動かして辺りを見回す。
「……? あれ、サラマンダー?」
しかし、見当たらない。彼女の刀身がどこにも見当たらない。
痕跡は確かにここだった。……しかし、目に見えるのは、上も下も、ただただ広がる宇宙のみであった。
「サラマンダーが……いない?」