第三百八十八話 爆発
治すと……削られるまでの時間がリセットされるのか……⁉︎
だとしたら……出来ないと思っていたアレが出来るかもしれない……!
「とりあえず……『変化』!」
緑色の光が私を包み、削れていく肉体を一気に回復させる。
すると、粒子が流れていた右手も左手と同じように流れる事を止め、完全に治った。
……削れている様子は無い。よし……出来る……!
右手をぎゅっと握って、私は確信した。一瞬の間も無く、私は自分の両手に別々の光を宿らせる。
それぞれの光は徐々に大きさと光の強さを強めていき、ついにはドッジボール大の大きさで虹色に輝きを放つ。
完全に同形状を保っているように見えたが、渦巻く方向のみが違っていた。
つまり、ここには全く同じ力を持ち、その力の向きだけが違う二つのエネルギーがあるという事。
ここまで一気に大量のマナを引き出すのは五体満足の今の状態でギリギリ何とかなっているレベルだ。
『変化』に使うマナが有ると、これは実現し得ない。……でも、実現すれば、こっちのものだ。
「じゃあ……ん、んぎぎぎぎ……」
期待に目を見開き、両手ごと二つの光を目の前へと合わせていく。
しかし、磁石のように光は近づけば近づくほどお互いを退けようとし、中々合わさってくれない。
合わせた先に、何かが起こる……そう、何かしら異変が起きるんだ。
物質の化学反応なんてのは何が起きるかいまいち予想できないけど……純粋なエネルギー同士なら、大方予想がつく。
あまりにもくっつこうとしないので『怪力』や『神速』を自分の腕にかけた。
その上で更に力を込めていくと、今度は徐々にでこそあったが光同士がその距離を縮め始める。
一ミリ、二ミリとその距離を光る輪郭を震わせつつ近づいていく。
そうして、ついにその輪郭同士が触れ合った次の瞬間。
「おっ……りゃぁ!」
さっきまでの反発はどこへいったのか、一瞬にして二つの光は一つに合わさる。
大きさはそのままだったが、光は先ほどの二倍……いや、何十倍にも強くなっていた。
そして今も強まり続けている。……これは……。
「そおいっ!」
何が起きようとしているのか、気づいたのは目の前を虹色に覆われかけたその時だった。
咄嗟に光を両手で掴み、後ろへと放り投げた次の瞬間。
目の前が虹色に覆われ、激しい爆発音と共に私は吹き飛ばされた。