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第三百八十六話 フルパワー

「____っ! くっそおおおぉお!」


 たった今知ってしまった事実、そしてそれを知ろうとしなかった自分に私は身悶えする。

 しかし、いくら身悶えしても状況が変化する事などないということも分かりきっていた。


 果ての無い空間へと叫び声は吸い込まれていき、地団駄を踏んでもただ一方向へと私の身体は突き進んでいく。


 残ったのは虚無感だけだったが、空洞となった感情に沸沸と焦燥と恐怖が溢れ始めていた。

 ……いや駄目だ、冷静にならなきゃ……。芦名から聞きそびれていたのは本当に自分を叱り付けたくなってしまうが、そんな時間があったらサラマンダーの残り時間に回したいほどだ。


 状況を整理しよう。マナの痕跡は途切れ途切れになっていて、いつものような正確な情報を得ることはできない。その上痕跡になっているのはサラマンダーが帯びているマナだから、それだって今現在とてつもないスピードで削られている……つまりは、痕跡が途中でぱったり消えてしまう可能性もあるというわけだ。


 正直、計画通りに行っているかと聞かれれば大きく逸れてしまっている。保証された成功はもうどこにも無いだろう。


 これだけ聞くと、正に最悪……だが、決して希望がないわけでは無い。

 まず、痕跡は新たに作られた物の方が色濃く残存している。つまりサラマンダーがいる場所が、一番マナの濃い場所……!


 マップを注意深く見ると、上部に強く光る虹色が見て取れる。それは私と同じ方向に進んでおり、進んだ後方に残る虹色の光は、数秒もしないうちにその反応を消して行った。


 ここだ……今真っ直ぐ行けば、サラマンダーにたどり着ける……!

 時間制限こそ短くなれど、まだ完全にサラマンダーを見失ったわけでは無い。まだ助けられるんだ……!


 『万物理解、サラマンダーのマナが完全に消えるまでの時間は?』


 『対象のデータを取得中……取得完了しました。残存マナ量六百万に対し、毎秒消費量は十万です』


 ってことは……残り時間はきっかり一分か……! 大分ハードになって来たけれど……追いつく以外に道はない!


 『万物理解、このまま行って私がサラマンダーに追いつくのは何秒後?』


 『五垓六千二百八十二京九千八百五十六兆三千二百億八万四千三百二十一秒後です』


 とりあえず長いってことは分かった。私が秒って聞いたから秒単位で答えたのか? 律儀だなあ……

 と、そんなことを言っている場合じゃない。今のスピードじゃ全く追いつけないってことだ。まあ、減速しかかっているのも理由の一つだろうけど……フレイから託してもらったこれを、無駄にすることはできない!


「『スキル増強』! そんで『神速』! あとその他諸々パワー増加!」


 体内のマナがごっそりと減り、フレイの白く輝く『仮神翼(イカロス)』が金色の光を帯び始める。

 それと共に、『天駆脚(ヘルメス)』には緑色の光が付属し始め、それの周りを渦巻き出す。


「『変化』」


 その一言で、私の後方に丸い岩が現れる。岩、といっても惑星級の大きさかもしれない。

 その岩から遠ざかるよりも前に、私はそれに足を踏み付け、翼を広げる。


「おっ、らあああぁぁ!」


 掛け声と共に、私は岩へ全力の力を込める。私がその衝撃で一瞬離れた次の瞬間、惑星ほどの大きさだった岩はその表層にいくつものヒビを走らせ、瓦解した。


 一瞬の間も無く、ほぼ同時に貯めにに貯めていた力を吐き出すかのように翼が振り下ろされる。

 瓦礫となった惑星は一瞬で彼方まで吹き飛び、その姿を消した。


 それらの過程を通して、私は空間を駆け抜ける。

 最早星が駆け抜けていくなんてものではなく、目に入る光が全て線となって私の視界を埋め尽くして行った。


「待ってて……サラマンダー!」

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