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第三百八十二話 一人で

「……え?」


 真っ先にその声を上げたのは、フレイだった。

 しかし、目を見開いて困惑するのは彼女だけではなく、イレティナとウンディーネもであった。


 私を見て、三人は立ち尽くす。

 フレイとウンディーネが緊張した面持ちで私を見る中、その沈黙を、ウンディーネは睨む表情をして破った。


「ちょっと……サツキ、また一人でやるっていうの? あなた、さっき皆と戦うって言ったばかり___」


「待って、ウンディーネ!」


 私へ詰め寄ろうと歩を進めるウンディーネを、横から割って入ってイレティナが手で制した。

 歩みを止められ、ウンディーネは私に向けていた睨みを解く。それと同時に、イレティナは何か思い詰めた顔をして、私の眼をじっと見ると。


「何か……考えがあるんだよね?」


 期待と不安が入り混じったような声色で、イレティナは問いかけた。

 ウンディーネが私に食ってかかって私を問い詰めようとした思いと、イレティナが感じている思いは多分同じだ。


 私が、また同じ間違いをしない事を望んでいる。また私一人だけで、全て解決しようとする事が我慢ならないんだ。もちろん、私がそうしないと信じている。


 ……だが、それでもイレティナは絶対にそうであるとは言い切れていないのだろう。だからこそ、期待にも、不安にもとれるあの声色なんだ……。


「……『無限』は、どこまでも広がる空間だ。はぐれる可能性は十分にあるし、その上中に漂う物質に当たりでもしたらもっと危険だよ。そして、仮に出口を見失ったとして……それを探せるのはこの中で誰?」


「……あなたと……フレイの『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』がギリギリ……」


 ウンディーネは私の問い掛けに言いづらそうにしながらも答える。

 イレティナは、ウンディーネを心配げに見ながら沈黙を続けていた。


「そう、そしてフレイだって万能というわけじゃ無い。もし対処しなければどうしようもない状況になってしまっては私が助けるほかない。そうすると、サラマンダーの身体は_____」


「もう良いわよ!」


 突如、私の声が遮られウンディーネの声が響き渡る。

 私の説明する最中、ウンディーネは彼女に似つかわしくない張り上げた声で叫んだ。

 

「色々言っているけど、要は私達が足手まといって事でしょ……⁉︎ サラマンダーを助けるのに、私達が要らないってこと____」


「違う!」


 再び突如、声が辺りに響き渡る。

 ウンディーネの声を、今度は私が叫んで遮った。


「……」


 ウンディーネは私を見て不意打ちを食らったように黙り込んでいた。

 言いたいことがあるのに言い出せないように、まるで口に封でもされてしまったかのように、何かをグッと堪えているようだった。


「私には……出来ないことがあるんだ」

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