第三百七十九話 時間制限
「十五……⁉︎ そ、それだけしか無いんですか⁉︎ ど、どうしたら……」
言い渡された時間に、フレイは予想外だったのか、慌てて取り乱す。
十五分でサラマンダーの命が尽きてしまう。きっとそう考えたのだろう。頭を悩ませるように顔をしかめた後、フレイはこちらへと向き直ると。
「サツキ……やっぱり、質問をする時間は____」
「七分半」
「……へ?」
告げようとしていた言葉を私に遮られ、逆にフレイは突拍子もない私の言葉に拍子抜けして声を上げる。
そんな彼女を尻目に、私が空にかざした手の上に白色の球体が現れる。球体には、数字が四つ並べられ、左から零、七、二……そして、一番右端の数字は、九、八と一秒ごとに数字を変えていた。
それが何なのかフレイは察したらしく、目を見開いてそれをじっくりと見る。
「これって……」
「タイマーだよ。七分と三十秒経過した後に時間を告げてくれる。フレイ、十五分は短いと思う?」
フレイに振り返りそう質問すると、彼女は何を聞くのかとでも言うような顔をする。
「それは……短いに決まっているじゃないですか。私達がサツキを助けるために向かった時だって、半日はかかりましたよ?」
「その半日のうち、ほとんどは私のいる場所を探してくれてたんじゃない? 評議会は広いから、大変だったと思うけど……それで、ほとんど場所を絞り切ってから、私を助けに来てくれたところまでどれくらいだった?」
そう聞くと、フレイは少し考え込むような顔を見せていたが、すぐに困ったような顔を上げると。
「うーん……思い出せません。あの時は、本当に手一杯でしたから……」
「あ、そっか……! ごめん、頑張ってくれていたもんね」
手を前で合わせて謝ると、フレイは照れ臭そうに首を振った。
確かにフレイ達が覚えていないのも当たり前だ。だとしたら、わかっていたと考えられる人間は……。
「芦名、知ってる?」
振り向きざまにそう聞くと、芦名は驚く様子も見せずに口を開き。
「……大体六分程度だったな。俺が休めるようになったところまで数えると七分だったが」
……やっぱりそれくらいか。
頭の中で予想していたことが当たり、静かに頷いていると、フレイはまた驚いていた。
「ろ、六分……⁉︎ あんなに必死だったのに、たったの六分だったんですか……⁉︎」
「必死だったからこそ、時間がゆっくりに感じたんじゃないかな。……まあ、とにかくフレイ、私の言いたいこと分かってくれたかな?」
そう質問すると、フレイは静かに驚いていたのをやめ、手を顎に当て考え始める。
「……救出までの時間よりも、探す時間の方がはるかに長い。だったら、そこの情報を得た方がより時間に余裕が出来る……と言うことですか?」
フレイはおずおずと聞いているが、完全に正解だ。やっぱり一番付き合いが長いだけはある。
「そう言うこと。で、多分私なら手こずる事もないと思うから……七分半、じっくり芦名に聞いてやろうって寸法さ」
正直、そこまで危機感は感じていない。テスト残り十五分だったらまだまだ余裕が有るのと同じだ。
サラマンダーは……絶対に助けられる。