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第三百七十六話 返答

「フレイ……」


 徐々に語気を弱まらせていき、フレイは顔を下へと俯かせていた。

 ……フレイの言っていることは正しい。芦名の言葉に急かされ、勢いで決めて良いはずのことでは無かった。


 サラマンダーが消えてしまって少しも立たないと言うのに、フレイはとっくに冷静さを取り戻している。

 私やイレティナ、そしてウンディーネが何も言えないでいる状況なのに、一番苦痛を感じているフレイが誰よりもはっきりと今の状況を分析しているんだ。


 今フレイが言ってくれて、私も自分が何をしようとしていたのか確認できた。

 私は後ろからそっと彼女の肩に触れ。


「……ありがとうフレイ。おかげで頭が冷やせたよ」


「っ……」


 フレイを労う言葉を掛けたつもりだったが、俯いたままフレイは動かなかった。

 何も言わずに、私はフレイを後ろへと回すように芦名の前へ立つ。言う言葉は既に決まっていた。


「芦名……私達は……」


 そこで一瞬、言葉を止める。

 芦名はさほど驚いてもいないような顔で私を見上げていた。今から言う言葉を分かっているのかは知らないが、それでも私の言うことは変わらない。


 先ほどの勢いはとうに消え失せ、フレイは私の後ろでただ立つだけだった。


 抱える視線を一緒くたに、私が放った言葉は。


「私は……サラマンダーを助けたい」


「っ⁉︎」


 そう、これが私の答えだ。

 芦名はやはり分かっていたのか、鼻で見透かすように笑って口元を微笑ませる。


 だが、フレイは違っていた。私がその言葉を言い切るや否や、私の前に現れ怒りに似た感情をあらわにしようとする。


「サツキ、何を言っているんですか⁉︎ さっき言ってたじゃないですか! 分かった、って。頭が冷やせたって……!」


「うん、そうだよ。頭が冷やせたのは本当なんだ。思考もじっくりと考えて引き出せたんだ」


「だったらなんで……!」


 絞り出すようにフレイは声を上げていた。その目は若干潤んでいるようにも見える。

 私だってフレイが私と同じことを言ったら同じくらい抗議するだろう。でも、それでもやっぱり、仲間は仲間なんだ。


「……芦名は確かに私達を騙したかもしれない。でもね、それと同じくらい助けてくれたのも事実なんだ。

 信用できる……とは言えないし、さっきまで散々敵対心剥き出しだった私が言うのは説得力が無いかもしれないけどね」


「……」


 フレイは沈黙していた。それは、賛成していない事を表していたが……同時に反論する気がないことも表している。


「私だって、何度もフレイ達を傷つけちゃった。正直、数なら芦名よりも断然上だ。……それでも、その度にフレイ達は許してくれた。それにさ」


 私はフレイの目線にまで腰を落とし、精一杯の笑顔を浮かべた。

 フレイは、それに目を見開く。


「助けたいじゃん。……まだ助かる可能性があるって言うなら、仲間を見捨てたくない」

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