第三十五話 作戦会議
私はヘイハチの国の軍事力をほぼ破壊してしまった。
流石に言い逃れも出来ずヘイハチがいたたまれなかったので、宝の3分の2もあげることになってしまった。
だが、問題はそこではない。最も問題点なのは……
「せ、拙者の浪漫が……夢が……」
ヘイハチが部屋から出てこなくなってしまった事だった。
確かにこの城、至る所にこだわりや好奇心、所謂ロマンがそこら中にあった。
ヘイハチの部下に聞いてみると、やはりあいつはロマン家だったらしく、あの大量の機兵もかっこいいという理由だけで採用されたらしい。
更に武力はあれしかないという。軍事に充てる資産を全部機兵開発に回していたらしく……。
つまり、今この国の武力は私たちだけという事。
……私にも責任はあるけどさ、機兵だけしか開発してないっておかしいでしょ。
迫る期日は残り二日。やれることはただ一つ、作戦会議。
「……で、どうする?」
私は丸い机を囲むようにして座る四人に聞く。
フレイ、ウンディーネ、エルゲ、それと参謀の人。
エルゲはあくまで補佐、軍略は参謀という別の役職がやるらしい。
「どうと言われましても……我々の兵器はもう無いのです。貴方がたの力で何とかして頂かないと……」
うーむ……どうしたものか……。
「私達でとりあえず暴れてみたら?それで退却するもよし、始末するもよしだし」
ウンディーネは身体をテーブルに突っ伏して若干液体気味になる。
「それはちょっと難しい。仮に退却することになって、そのとき逃げられるかも怪しいんだ。
流石にまだ王は出てこないと思うけど……結構強力なスキルを持った奴もいる。
そして問題なのがこいつ」
私は懐から紙を四枚取り出してそれぞれに配る。
「リヒテンシュタイン……?あの、これって……」
フレイは紙を不思議そうに見る。そう、これは私が危惧している奴の個人情報。
リヒテンシュタイン。男、45歳。今回敵対している国の一つ、エブルビュート国の大佐だ。
スキルは『絶対視認』。一度見た者の情報を得るという『万物理解』のほぼ下位互換だが、実際は情報を全て得ると言う能力自体が恐ろしい能力なのだ。
弱点や隙は容易く突かれ、攻撃はほぼ防御される。フェアラウスの異常な環境のせいで私は活用しきれていなかったが、今回は使える。
私は対策できるかもしれないが、フレイは難しい。かと言って私一人で行けばどんな不意打ちを喰らうかは分からない。
「見て貰えばわかると思うけど、そいつに出くわしたらおしまいと思って良い。言いたくはないが、勝ち目は薄いからね」
はぁ……何か良いアイデアはないか……ん?ゴキ……ブリ?何かにくっついているな。
ふと床に目をやると、一匹のゴキブリが黒く平たい何かに張り付いている姿が見えた。
「あの、参謀さん。あれってなんですか?」
「え?ああ、あれはゴキブリに毒素の入った餌を食わせて、それで死んだゴキブリを更に他のゴキブリに食わせる物ですよ。一網打尽にできる性能なので重宝しています。それが何か……?」
一匹に……毒を仕込んで一網打尽……。
その時、閃きが舞い降りた。これは……行けるかもしれない。
「フレイ、『機械仕掛けの神』の射程ってどれくらいまで?」
「射程ですか?そうですね……20kmがギリギリじゃ無いでしょうか?」
「マナを送り込んで大きさを変えるとかは?」
「できますよ?でもそれがどうしたんですか?そのリヒテンシュタインとやらに会ってしまっては元も子もないですし……」
……よし、やっぱりフレイが居て助かった。
これなら行ける……!
今日は私用で少し文字数が少なくなってしまいました。明日からはいつも通りの文字数で書きますので、何卒よろしくお願いします。