第三百五十七話 ドーム
___一瞬、サラマンダーに理由を聞こうとしていた時、何かに呑み込まれる様な感覚がした。
それを脳が理解し、私はサツキの方へと振り向いたが、既に彼女の姿は無く、目の前は何かが立ち塞がり何も見えない。
「……ちょっと、何よこれ……?」
サラマンダーは私の後ろで困惑した様子で辺りを見回す。
しかし、実際に私達が目にしているものは、私達をドーム状に囲むとても狭い壁。サラマンダーはいくら見回してもその困惑を解消できず、壁に刀身を当て更に困惑と焦りを深めていた。
「ほ、本当にどこなのよ……⁉︎ 私達、さっきまで森の中に居たのに……」
「サラマンダー、少し下がってください」
そう伝えると、サラマンダーはこちらを振り向く。
彼女は、私の横に光る円状の光を見ることになった。
私の行動に勘付き、すぐさまサラマンダーは後方へと飛び退く。
その瞬間、光が廻り出した。
「『無限連撃』!」
壁の一点を目掛け、威力はそのまま、規模を縮小された光の剣の群勢が手当たり次第に射出される。それと共に金属同士がぶつかり合う様なけたたましい音と激しい熱によって煙が生じ始めていた。
乱射とも言うべき精密性ゼロの連撃にせよ、距離を厭わなければその威力は絶大だ。
木や壁はおろか、岩盤だってくり抜けるほどの威力の筈だった。
だが、しかし。
「……嘘……」
すでに壁如き跡形もなく無くなっている筈なのに、煙が晴れた先に有った風景は、変わりなく、目の前で終わっていた。
傷一つ付いていない。
暗闇のせいで詳しくは分からないが、この壁は少なくとも岩や、鉄などでは無い。もっと、より特殊な、私の『機械仕掛けの神』のような形成された何かだ……。
そう考えながら立ち尽くす私の横を急に誰かが通り、私の前へと現れる。
「フレイちゃん……私の矢だったら、いけるかもしれない!」
私の前に立ったのはイレティナだった。
折れた金色の矢を右手に握りしめ、すぐさま大きくふりかぶり、壁の一点へとその先端を激突させる。
「……」
息を呑み、私は結果を見張っていた。
あらゆる物を破壊するイレティナの矢なら……行けるか……?
しばらくの沈黙が続いた、その後。
「……、……っ、っっ! 痛ったああああ!」
イレティナは悲鳴を上げて飛び上がり、それと共に刺さることもできなかった矢がカランと無造作に音を立てて落ちる。
「駄目ですか……」
「全然刺さらなかったよ! ただ硬い壁ってわけじゃ無いみたい……」
腫れているのか、自分の手をさすりながら私の方へとイレティナは返事をする。
……評議会の時とも違う。この壁……いや、このドームは一体……?