第三百五十五話 止められない
「……でも、やっぱり納得できません! アシナはサツキが手に負えなくなると先程言いましたが、サツキはいきなり暴走したりするような人ではありませんよ!」
「私も……そう思いたい。芦名、こう言うのはどうかな? 私と君で最後の王を倒したら、私が君の目の前で死ぬ。そうすれば、後は君が自分で死ぬだけで良い」
未だ食い下がるフレイに便乗して、私も芦名に提案した。
しかし芦名は頷かず、こちらを睨む視線を止めずにいる。
「信用ならん。お前が死ぬメリットが無いだろうが」
「それは……君と闘いたくないから」
「さっきまでバチバチに戦闘態勢だった奴が何言ってやがる」
あれは反射というか、咄嗟に出てしまう気分なんだけども……言っても信用されなさそうだし、どうしよう……。
「第一、お前が自殺するってなって、後ろの奴らは黙って見てんのか?」
「……それは……」
私はどうとも言えずに皆を見たが、皆も何と答えればいいのか黙ってしまっていた。
しかし、その只中。
「出来る訳無いじゃないですか! サツキが死のうとしたら、どんな手を使ってでも防ぎますよ!」
唐突にフレイがハッキリとした口調で、芦名の言葉を否定した。
「フ、フレイ……⁉︎ 出来ないって言うのはともかく、それ言っちゃう⁉︎」
「我慢できませんよ! ただでさえサツキは危なっかしいのに、そんなこと言われたら否定するに決まっているじゃないですか。私はサツキには死んで欲しくないんです!」
困惑する私にさも当たり前のように返すフレイに、私は唖然とし芦名は呆れ返っていた。
だからと言って抑えられないのは……。……でも、それくらい大切にしてくれているのはありがた____
「出来るの?」
私とフレイが向き合い、芦名がそれを見る中、横から冷たい声が聞こえて来た。
振り向くと、そこにはこちらを見るサラマンダーがいた。イレティナとウンディーネは、彼女を緊張した面持ちで見つめている。
フレイへジリジリと近づいていくサラマンダーに、フレイは豆鉄砲を喰らったような表情をして驚いていた。
「サラマンダー……? 出来る……って、どういう事ですか?」
「仮にサツキが自分で死んだりしようとして、あんた本当に止められるのって聞いてるのよ、フレイ」
睨み付けられている気分になるようなサラマンダーの声色に、フレイはたじろぎながらもすぐに答える。
「と……止めてみせます! サツキが望んでいなかったとしても、心を鬼にして……!」
「そう言うことじゃないの。私が言いたいのはあんたの力で、本気で死のうとするサツキを止められるの? って事」
「……え?」