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第三百四十九話 コウヤ

 自分の近くへと駆け寄ってくる彼女に目を瞬かせ、唖然としていた。


 間違いなく、今目の前にいるのはフレイだ。正直この空気の中ずっと帰り道を行くのは中々辛いし、助かる。

 しかし……拭いきれない疑問が一つあった。


「フレイ……どうしてここに? ヴィリアと一緒に皿洗いしてたんでしょ?」


 ここは森の中腹だ。あの家からここまで歩くのはかなりキツい筈だし、何よりさっきの意外ぶりからしてフレイは私達が帰ってくることなんて考えていなかった。


 私の問いに、フレイはハッとしてきょろきょろと辺りを見回すと、私を見上げる。


「ええ……それが、コウヤが見当たらなくて……」


「……? コウヤ?」


 初めて聞く名前に若干引っかかりを覚えながら私が首を傾げている一方、ウンディーネとイレティナはそういえばというような顔をしていた。


 私が困惑している理由がすぐに分かったのか、フレイは慌てて説明を始めた。


「あ、サツキはまだ知りませんでしたよね。えっと、コウヤと言うのは昨日まで一緒にいた仲間の一人で、ヴィリアより前に出会った方です。ここに来る時に空中で戦って、それから仲間になりました」


「ちょっと待って、空中? どう言う経緯で空中で戦うことになったの?」


 私が驚きながら聞き返すと、フレイは何の抵抗もなしに、当たり前のようにその言葉を言った。


「ああ、それは……彼が、()()()宿()()()()()のブリュンヒルデを操っていたからですよ」


「……え?」


 私は、その言葉に目を見開いて固まった。

 機械に宿った……精霊……? 精霊が宿るのは……おかしいことじゃ無い。何かしらの偶然で宿ることなんて、当たり前だ。だが……重要なのはそこじゃ無い。機械……それも、空を飛べるような機能を持った代物だ。


 そんな物、用意できる存在なんて限られている。それにさっきまで違和感を覚えていた名前も、いきなり消えたと言う話も……。


 まずい……大分まずいことになっている。恐らく、コウヤは……。


「……皆、今すぐ出かける支度して! 一刻も早くコウヤを見つけないと___」


「その必要は無い」


 私が赤い魔法陣を地面に光らせたとき、突如として私の耳に突き刺すような声が差し込んだ。

 その声は、冷徹な声で、闇を纏った声で……聞き慣れた、声だった。


 振り向くと、その彼は鬱蒼とした森の中からこちらへ歩み出して来ていた。

 彼の足元に茂る草木は次々と何の前触れもなく吸い込まれ、消えていく。日に照らされているにもかかわらず、青黒く煌くマントを背負う彼の周囲だけが暗く包まれていた。


 気怠げな眼をこちらに見せていたが、それすらも背筋を凍らせる程に私達の意識を刈り取っている。

 

「……芦名……?」

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