第三十三話 平八
よろしく?今こいつ……よろしくって言ったのか?
私は信じられなかった……。だって、人を……拐って連れてきたんだぞ?
「ああ、これは失礼致した。説明をしていませんでしたな」
ヘイハチ……が言ったのは、まとめるとこうだった。
まず、この国の周辺との付き合いについて、同盟とまでは行かずとも、複数の国が協力しあっていたらしい。貿易や、外交など……その仲を取り持っていたのがコウキ。カリスマがあったらしく、侵略派と自然派の派閥に分かれていながらも、全く戦争は起きていなかったらしい。
まあ、最近までは、と言うことだ。私がコウキを天界に還した。
……彼らは一週間もしないうちにもめ始めた。いや、あまりにも協調性がないと言うか……。
で、今にも戦争が始まりそうだった直後……タケルも消えた。流石にやばいと思ったそうで、一時的に収まったようだ。
要するに、私が彼らの共通の脅威になった、そういうことだ。そこで、同盟を組むと言うことになったらしいが……このヘイハチとかいうおっさんは誇りを持ってないとか言って一人断ったらしい。
……馬鹿かこいつ!?こう言うのはアレだが、それこそ同盟を組まなかったら私に簡単に殺されるだろう。
それで、同盟を組んだ王達に今潰されそうになっているらしい。あちらさんは六カ国で叩きに来るようだ。
「……で、何でそこまで知っていて私を連れてきたわけ?正直言ってやってる事がおかしいし……
この手錠つけられてなきゃ今すぐ飛びかかっているぐらいなんだけど」
「それは簡単な話です。このままですと拙者の国は滅ぼされ、守るべき国民達すら良くて奴隷……ですから貴殿ら、コウキ殿を倒したと言う者の力を借りれば良いと思いましてな」
ヘイハチは腰を少し下げ、私よりも目線を下に移した。
敵の敵は味方、と言うわけか……いや、でもそれだったらやっぱ同盟組めば良いじゃん……。
「拙者は大切にしているものが二つあるのです。自分の誇りと自分の民。この二つを欠かさずして拙者は生きていくことはできませぬ。ただ、自分の命に憂いはありませぬぞ?ここは一つ、条件は拙者の命、と言うのでいかがですかな?」
ヘイハチはそんなことを容易く言う。民を守るためなら自分の命も差し出す、か……。
フレイはヘイハチの言った言葉に唖然としていた。そしてそんなことは良くない、と言おうとしたのだろうか。口を開く。
だが、その前に私が一言それを遮り呟く。
「オーケー、その仕事受けよう」
「サツキ!?」
私が言った言葉が信じられなかったのか、フレイは私の方へ目を向ける。
「私としては一度に7人も回収するまたとないチャンスだ。もし本当に命を差し出すと言うなら、喜んで働こうじゃないか」
私はヘイハチへ目を向け淡々と述べる。
「サツキ……!確かに、私達は酷い扱いを受けましたけど、この人は……きっと良い人だと思います」
……フレイは少し優しすぎる、と言う所があるかもしれない……。問題は、良い人かでは無いのだから。
「フレイ、この戦争が起こったのはコウキが消えたからだ。消したのは……誰だと思う?」
私は小さなフレイを見下ろすように問いかける。
「……それは」
フレイは少し顔を俯かせ、悲しげな顔をする。
「別に目を逸らす必要なんてないさ。うん、私だ。私が彼を消した。だから……私は責任も伴っている。
なーに、別に私だけでも大丈夫だよ。だからフレイ達は安全なところにいて良いから」
それに、最後は全員始末しなきゃいけない。要するに、私達はもう良い人かどうかで判断できるような立場ではないのだ。
少なくとも、コウキのいた所は今頃恐慌状態だろう。まだ指導者が現れるには早いからね……。
「……サツキ、でも……」
「でもじゃない。誰に取って良い人か、悪い人か。盗賊団の頭だって言っていたろう?」
私がそう言うと、フレイは落ち着きを取り戻し、顔を再び向ける。
「そう、ですね。誰かにとっての正義は誰かの悪かもしれない……。サツキを放っておくことは出来ません。
私も行きましょう。」
「……!」
正直言って、私は驚いた。説得までは行っても、まさかフレイが闘ってくれるとは思っていなかった。
今の彼女は戦力的にも十分だ。是非使わせてもらおう。
「ありがとう。……さて、ヘイハチさん、だよね?向かってくる敵は?いつ?」
私は近くにあった金色の型と赤色のクッションで作られた椅子に座る。
「向かってくる敵は……およそ十万。こちらも機兵を用意してはいるものの、流石に十万となってくるといささか……」
「問題はないさ。それくらいなら私にとって十分」
十万……全員スキルのコピー元っていうだけさ。
私は脚を組み、余裕の表情を浮かべる。
さあ、始めようか……この世界はじめての無双劇を!
設定資料を今日か明日、私の記事にあげようと考えています。
サツキやフレイについて書いていくので、是非見てください!