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第三十一話 拉致られた

 ……!?ここは……。


 私はぱちりと目を開けるが、大して視界の明るさはつぶっている時と変わらなかった。

 私はどうしてたんだっけ……?あ!あの男に気絶させられて……!


「フレイ!ウンディーネ!サラマンダー!?何処かにいるのー!?」


 私は起き上がり、大声を出す。すると、近くの盛り上がった何かがモゾモゾと動き出す。


「うーん……サツキですか?えっと……どこですかここ?」


 起き上がった影はフレイのようだった。僅かなシルエットで見分ける他ない。


「私も居るわよ。武器とかは没収されていないみたいね……ウンディーネも居るわよ」


 鞘がぼうっと赤く光る。良かった……全員ちゃんといたみたい。

 その時、座っていた物がガタンと揺れた。姿勢が前のめりになり、転んでしまう。


「う……なんだ?安定した場所では無いみたいだけど……あ、あれ?」


 私は起き上がろうと手を動かそうとするが、カチャカチャと音を立てるだけで動いてくれない。


「大丈夫よ。小さい炎なら出せるから、ちょっと待ってなさい」


 サラマンダーは勢いよく鞘から抜け出すが、足が正座している状態の私よりも少し上の所で「あいたっ!」

と声が聞こえる。


 その一拍後、剣先にぼうと小さな炎が点き、私達のいる場所が照らされる。

 上も下も木材で、所々に干し草が積んである。フレイとウンディーネ、サラマンダーもはっきりと見えるが、だいぶ近いところにいた。


「ここは……」


 フレイが薄茶色の木材を見上げて呟く。

 うん、ここは……箱の中だ。


「箱じゃない、ざるな警備ね全く。どうせ私たちなんか全く知らないような人間が連れ去ったのよ。

 サツキ、こんなところさっさと出ちゃいましょう」


 サラマンダーはつまらなそうに言うが、私は明かりに照らされたことで改めて自分がどう言う状態なのか理解した。


 両手には黒い輪のような物が二つ、その輪を繋ぐためにそこには鎖が繋がっていた。


「これ……手錠だ……」


 間違いない、これは手錠だ。ただ、何か……違和感がある。


「はあ?手錠がどうしたって言うのよ。ほら、この箱燃やしてやるわよ!」


「……駄目だ。マナが排出できなくなっている」


 私は申し訳なさでポツリと呟く。


「マナが……?あんた、それって!」


 そう、スキルが使えなくなっている。この手錠、特殊な技巧が施されているようで体の中に何かが詰まっているような感覚がある。


「……私も手錠が。これでは機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)も使えません……」


 フレイのそれは懐に入っていた。これじゃこのままどこかに……


「どうすんのよ!?いきなり拉致られて私達何処に行くかも知らないで揺られているのよ!?このままじゃ本当にどうなるか……!」


「ああ……あそこで私がもっと早く刺していれば……」


 フレイとサラマンダーは慌てたり後悔したりして半ばパニック状態になってしまっている。

 くそ……一体どうすれば……!


「一旦落ち着きなさいよあんた達……。あの……ミゲルだっけ?あいつの言いようじゃそう悪い扱いは受けないはずよ。それにこの箱、マナが循環している……一種のスキルね。それなりに丁重な扱いは受けているらしいわよ」


 ウンディーネは壁に触れながら皆をなだめる。

 ……私も少し焦っていたかも。落ち着かなきゃね。


「『んだんだ!せっかくふかふかのベッドが有るんだからちょっと眠って休んで置くべ!』」


 スラ吉も干し草の上に身体を委ねて床に伏せる。

 スラ吉のマイペースさにみんなも少し気が楽になったみたい……。


 その時、上から穴が開いていないのに箱が降ってきた。

 箱といっても紙でできた小さな箱で、立方体というよりは直方体。


 何か文字が書いてあったので見てみると、そこには……


「……カロリーフレンズ?」


 日本で見て来たお馴染みの固形レーションのパッケージがあった。


「サツキ、それなんですか?箱のようですが……」


 おっと、フレイは森育ちだし知らないか……いや、ファンタジー世界にこんな物があって溜まるか。

 気に求めていなかったがこの世界の基本語は日本語だ。このカロリーフレンズも日本語も、先人達の開拓……もとい侵略の成果なのだろう。


 コウキやタケルと言った西寄りの王は自然のままにファンタジーを楽しんでいる一方、東側は侵略派……その大元が機械都市だ。全員回収した暁にはファンタジー世界にまで科学の進歩を戻してやろっと。


 そんなことを考え、私は箱を開けてフレイに見せようとする。


「これはね、この箱を手で……」


 気付け、とでも言うように手にかかっていた黒い悪魔がかちゃりと音を立てる。

 ……


「どうしろって言うねん!」


 私は床に思い切り頭を打ち付けた。

 手に枷付けといてこの対応は無いだろ!うーん……どうすれば……。


「ねえ、それ何なの?教えなさいよ早く」


 ウンディーネが私の顔を覗き込むようにこちらを見る。


 あれ?そういえばこいつさっき……。

 壁に片手をつけていたのを思い出し私はウンディーネの手を見る。


「手錠ついてないじゃん!」


「当たり前でしょ?基盤はスライムなんだから、手錠なんてすぐすり抜けちゃったわ。

 マナを押さえつける手錠もマナの塊の精霊には敵わないでしょ?」


 うーん……何というゴリ押し……。


 その後はウンディーネに持ってもらって私達は食事を取った。

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