第三百二十五話 使命
「……」
私はヴィリアの話を黙って聞いていた。
本音を吐露するヴィリアは、言葉尻にため息を混ざらせまぶたを半分閉じていた。
ヴィリアは……迷っている。今まで見たこともなかったが、確かに彼女は今どうするべきか分からなくなっていた。
友達をあまり作らない……と言うのは間違い無いとは思う。……でも、それと共に実際のヴィリアは決して人間が嫌いな訳では無いと思う。仲間を守る精神は人一倍……私以上に強い。そのために仲間を守ろうとして周囲に攻撃的になってしまうのだろう。
そんなヴィリアが、きっかけを持って私を受け入れてくれた。
それはとても嬉しいけど……ヴィリアに取って新しく受け入れると言うことは本来とても時間を使う物のはずだった。何事においても言えることだが、ゆっくりと馴染ませる事は大切だ。
しかし、私には仲間が多くいた。その中には、サツキも……。
ヴィリアは抵抗こそしたがサツキに向かって攻撃をしようとはしなかった。その理由は、私の仲間だからという一点に収束してしまう。
ヴィリアの仲間である私、そして私の仲間であるサツキ……。ヴィリアの想像していた彼女と、私と行動を共にする彼女の像はかけ離れてしまっていたのかも知れない。
それが今、ヴィリアの抱いている困惑の原因だとするならば……私が言える事は一つだろう。
「ヴィリア……その……一度、サツキと話をしてみませんか?」
「話……か?」
おずおずと聞く私に、ヴィリアは少し驚きを見せて顔を向ける。
その表情は決して嫌に感じている物ではなく、私は内心安堵して更に言葉を進めた。
「はい、サツキと一緒に話せば、きっとヴィリアも何かわかるんじゃ無いかと思いまして……」
私の言葉に、ヴィリアは小さく頷く。
「……なるほどな、確かにその通りだ」
「! で、ですよね! やっぱり二人で話すって事が大事な時も____」
「だが……やはり駄目だ」
「……え?」
しかし、ヴィリアは一度間を置いた後、目を伏せて首を横に振った。
「ど、どうして……」
「私にとって、『七聖霊』をいたずらに利用された事は許し難い行為だ。それが故意であれ他意であれ、私は私以外の人々の為にもあいつを許す事はできない。この力は、人を助ける為に使うと決めたからな」
ヴィリアは静かにそう言い放った。
きっぱりと、突き放すようにも思えるような言葉使いだった。
……しかし、そこに怒りは無かった。やるせなく、自分に課した使命に従っているようだった。
……違う、違うんだ。使命で自分を縛ってはいけない。自分が志したからこそその使命があるのに、それでは……まるで嫌々やっているみたいだ。
「……ヴィリア」
私は、再びヴィリアに呼びかけた。
ヴィリアも飽きずにこちらを見てくれる。私の言葉を待ってくれているのだ。
「……もう一度だけ、サツキにチャンスを与えていただけませんか?」