第三百二十四話 新たな思い
「おおー……」
パチパチと音を立てて弾ける豆を私は目を輝かせて眺めていた。
“焼く”という調理方法を見るのはこれで三度目になる。イレティナが山の中で魚を焼いた時と、イレティナとサラマンダーが熊肉を焼いた時、そして今現在が三回目だ。
ヴィリアが言ったとおり、私にこの調理経験は無い。
だからこそ、せっかくの機会だから実践してみようと試してみたわけだが……。
「……中々、難しいですね。一度も経験の無い私がするには無謀だったかもしれません……」
炎を出すヴィリアの横で、私は少し俯き気味に呟いた。
そんな私の姿に、ヴィリアは顔を少し上げフライパンを掴む。
「まあ、一朝一夕とは言えないからな。それに道具だってほとんど用意していないこの状態では成功する方が難しいだろう」
「道具……ですか?」
ヴィリアの発した単語に、私はきょとんとして鸚鵡返しに聞いた。
「知らないのか? 街に下りれば発火剤の一つや二つ何処にでも売っているぞ」
「そんな物が……! 知りませんでした……!」
目を丸くして、私はヴィリアの顔を見た。
そんな私の表情を見てか、ヴィリアは炎を若干揺らがせ閉口する。
「……ま、まあ新たに知れたという事でいいだろう。……しかし、お前は他にも学ばなければいけない物が有るぞ。この木材、どこから持ってきた?」
ヴィリアは叱り付ける口調で木の枝を指差し私に問いかけてきた。
「そ、それは……家にある物を使うのも悪いかと思いまして、散歩がてら集めた木の枝で……」
「駄目だ駄目だ、木の枝だけでは火が育たん! 火打ち石であれ何であれ、生まれた火を絶やさないためにはまず最初に燃えやすい落ち葉等を燃やし、そこから小枝、薪と広げていくのだ」
片手を使って色々と表現をしながら、ヴィリアは解説をしていく。
なるほど、火は育てていく物、と……。
「ヴィリアは火に詳しいんですね。あ、それとも家事全般は出来ちゃったりするんですか?」
「フン、まあな。祭祀長様の元でお世話をさせていただいているから自然と身についたのだ。……でも、ひとつだけ慣れないことがあるな」
少し嬉しそうになったかと思うと、ヴィリアはいきなりぽつりと俯いて呟く。
今さっきまでとはどこか違う雰囲気で、私もそれは悟っていた。
「……どういう事ですか?」
「祭祀長様にもよく言われるのだが……私は、友を作りにくい性があってな。排他的……と言うか、新たな存在と言うのは中々慣れられないんだ」
ヴィリアは落ち着いている。炎も至って順調に、同じ火力を出し続けていた。
「排他的……それだったら、私だってそうですよ。大抵の人には初対面警戒しちゃいますし、この前だって、ちょっとした事で相手に槍を……」
「ははは……それは初対面の話だろう? 私は事情が少し違うんだ。お前の仲間……サツキにだってどう接すればいいかいまいち掴めない。確かに因縁はあるが、だんだんと悪いやつでは無いのかも知れない……とも思えてきてしまっているのだ」