第三百二十三話 料理
___時は少し遡って十数分前。
目の前の食材を前に、私は次々と刻んでいっていた。
豆類を細かく刻み、香り付けの葉、をフライパンに入れる。
台は石台だが……ヴィリアが清潔にしていると言っていたし、おそらく大丈夫だろう。
ある程度の下準備が完了して、私は不意にサツキとマナティクスがいる方へと顔を向けた。
しかし、そこには既に白い膜のような物が現れ、二人の姿も声も覆い隠してしまっていた。
「……二人とも……大丈夫でしょうか……」
漏れ出るようにして言ったその言葉に、私はしまったと思いながら首を横に振って自分の言動をひとり訂正する。
私が考えたって、どうしようもない事なんだ。サツキにはサツキの考えがあるのだろうし、ましてやあの二人が戦い始めるなんて事だってあり得ない。
今は料理に集中しよう。その方が後できっとサツキも喜んでくれる。
「……フレイ、何か作るのか?」
台の方へ向き直ると、寝室の方からやってきたヴィリアが現れこちらに声をかけてきた。
髪はいつもと変わらず真っ直ぐと赤い色をしていたが、目が完全には開いておらず起きたばかりである事が窺える。
「ヴィリア、おはようございます。そうですね、軽い物ではありますが少し朝食をと思って」
そう返事をしながら、私はフライパンを台に乗せ下が空洞になっている穴へと乗せた。
『機械仕掛けの神』で尖った形を二つ作り、何度かその空洞の中でお互いに打ち付け合わせる。
しばらくもしないうちに火花が散りだし、次第に用意していた燃料である木材へと火が燃え移っていった。
後は何度か木を継ぎ足せば、炒め物くらいは作れるだろう。
私は料理に集中して、焦げ目が偏らないように何度も見続けた。
しかし、それと同時に木も継ぎ足さなければいけなく、上と下を交互に見るような状態になってしまう。
「また燃料が足りなくなってきましたね……って、料理の方もかなり熱が入って……! ど、どうすれば……」
てんてこまいになって慌てふためいてしまっていると、不意に横から炎が飛んできた。
炎は正確に空洞の中へと入り込み、下の炎が燃え尽きたにもかかわらず、フライパンの底を焦がし続ける。
「……私も手伝おう。余りこう言った火を使う料理は慣れていないんだろう?」
「どっどうしてそれを……」
「見れば分かる。火加減も適当だし何より火の管理がなっていない。……まあそもそもお前の暮らしていた森では失敗したりでもしたら一瞬で大火事になるだろうし、練習のしようもなかったのだろうがな」
ヴィリアは少し微笑んで、私の近くへと寄って更に火加減を調節していった。
次第に青い炎へとなっていき、料理も綺麗に色づいていた。