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第三十話 新たな国へ

「しかし……フレイ、君はどうしたいの?」


 私は船の風景から見える暗い夜の海をデッキに出て見る。


「ん?何をですか?……あ、満月」


 フレイは海に反射して映し出される月を眺める。


「大陸の方に戻ってきたらさ。私も今特に決めることもないし、どうせどこを選んでもやることは変わらないからさ」


 特に急を要することはない。評議会というのも興味はあるけど……聞く限りやばそうなところだし。

 情報を覗こうとしてもフェアラウスと同じく認識できない。

 フリーのマナじゃないと基本見れないんだよね……。


「そう……ですね、北に行ってみたいです。こっちと違う空気、気になりませんか?」


 フレイは白い肌を月明かりで照らされ、暗闇が一層肌を際立たせる。

 フレイは……そうか、森から出たことがなかったんだ。南に近いこちら側……大陸の方でも端っこ。

 私は昔よく旅行に行っていた。だから、様々な景色を見ることが大切なのはよく分かる。

 アメリカの空気、エジプトの暑さ、ロシアのサウナ。


「わかった、次の国は北の端っこだ!観光地とか食べ物が楽しみだね!」


 私は月が沈もうとしているうすら蒼い空を指差す。


「……サツキ、そっちは西ですよ」




 __2時間後。


「zzz……」


「むにゃむにゃ……」


 私達はソファに二人で寝そべっていた。


「ちょっと!日は登っているわよ!起きなさいってば!……駄目ね、ウンディーネお願い」


「刀じゃどうしようもないものね。良いわよ」


 突如、私の息が苦しくなる。口から酸素が運ばれてこないことを感じ取り、体の中心が締め付けられるような感覚に襲われる。


「んぐ……ぐむ……ぷはぁーっ!はぁ……はぁ……な、何?」


 私が苦しみだし目を開くと、呼吸は再び正常にできるようになった。


 横では私と同じようにフレイが激しく息をしている。


「『おめえら全然起きねえからよ、ウンディーネが息を一回止めさせたんでさあ』」


 スラ吉が表面に現れる。

 起きないからって息を止めるのはどうかと思うけど……。


「……で、どうしたの?起こそうとしたってことはそれなりの理由が有るんでしょう?」


 私は片目を瞑りながら息を整えリラックスする。


「ああ、ついたのよ、港町に。さ、降りて北……だったわよね?さっさといきまそしょう」


 サラマンダーは鞘に自分から入り、私たちの出発を促す。


「……前二度と入りたくないって言っていたよね?」


 そう、一度無理矢理収めたとき彼女は相当ご立腹だったはずだ。


「あー……気に入ったのよここ。結構良い場所だし、私しか入れないってなると優越感も3割ましだからね」


 ……そんなことで変わっちゃうのか。でも、収納としては好都合だし別に良いか……?


「ふーん……ま、いいや。行こっか」


 そう言い私は皆んなを引き連れて船から降りる。


「北行きの馬車って何処だったかな……?えーと……あっちが東行きでこっちが西行きだから……」


 私は看板を指差して探す。


「その必要はありませんよ、お嬢さん」


 突如、爽やかな男の声が聞こえる。

 声のする方へ向くと、そこには以前会った金髪の男性がいた。


「あ、あなたは……」


「しばらくもしないうちにまた会いましたね。サツキさん」


 港町で会ったイケメンの男性、エルゲだった。


「ちょっと、サツキ……早くいきましょうよ!」


 サラマンダーは私に小声で話しかける。


「え……どうしてさ、別に良い人だよ?ところでエルゲさん、さっき言ってたその必要は無いっていうのは……?」


「だからサツキ!その男、なんか妙なのよ。まるで仮面を被ってるみたいな……」


 サラマンダーはどうしてしまったのだろう?何か妙に慌てている。


「ああ、それはですね」


 エルゲさんは不意に手を上げ、指を鳴らす。

 すると、死角だった木、茂み、建物の影などのあらゆるところから侍のような格好をした人間が何人も現れる。


「貴方たちは北には行けませんので……捕まえろ」


 な……どういう……?

 その時、『万物理解』から連絡が伝わる。

 『警告。後方から1秒後に手刀、2時の方向から突き、計2つの攻撃が来ます』

 攻撃!?


 その時、私の身体に影が刺す。先程の侍が後ろまで忍び寄っていたのだ。


「くっ!寄るなぁ!」


 すぐさま私は腹を蹴り付け、海まで吹き飛ばす。侍はそのまま海に激しい音を立てて落ちる。


 振り返ると二人目が既に来ていた。攻撃が飛んできた瞬間、私は喰らう前に腕を押さえた。


 この型……中国拳法!?なんで現世の技法をこいつらが……


「ぐっ!」


 横を見ると、腕を押さえつけられてしまっているフレイがいた。

 『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』を発動する前に封じ込まれてしまったようだ。


「みんな!」


 ウンディーネも既に気絶し、フレイもたった今手刀を打ち付けられて意識を失ってしまった。


「くそっ……!なんの真似だ!」


「はい、貴方達を我が主君の所まで連れて行くつもりです。一度眠っていただきましょう」


 突如首に衝撃が渡り、そのまま私の意識は遠のいていった。

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