表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

319/681

第三百十七話 秘密

 私の言葉に、マナティクスは静止する。

 しかし、彼女自身が掴む彼女の腕が、微かに震えていた。顔は一切こちらへ向けず、その表情は伺えない。


 それでも、私へ恐怖に似た感情を抱いているのは確かだった。

 神が、人を恐れると言うのもおかしな話だが、彼女の秘密を抱えている私に恐怖を抱くのは至極当然だ。


 今なら、マナティクスを強請れる。彼女からこの世界の真実を聞き出すことができるんだ。


 私は沈黙を通す彼女に、更に沈黙を返した。静寂が支配する空間で、マナティクスの手だけが震え続ける。

 波の音も、鳥の声も、全く耳には入ってこなかった。異様とも思える静けさの中、マナティクスが、遂に痺れを切らした。


「……知っているのは、貴様だけなのだな?」


 こちらを振り向かずに、マナティクスは語頭を震わせ質問する。


「……うん」


 それに対して、私は微かに首を縦に動かして彼女へ返答した。

 その途端、地面を照らしていた光が消え失せる。光だけじゃない、背後から聞こえていたフレイの火を焚く音も消えた。


 これは……⁉︎


 気付けば、私とマナティクスを白いドーム状の何かが覆っていた。

 感じることが出来るのは、空間に均等に注がれる僅かな光のみ。外部から、遮断された。


「ッ……マナティクス、何のつもりだ……」


「待て! ただ周囲に聞かれないようにしただけだ。貴様を始末する気など毛頭無い!」


 私がマナティクスを睨みつけながら左手に緑色の光を宿らせると、目を見開き、片手を突き出して彼女は私へ弁解した。

 この様に慌てるマナティクスを見るのは初めてだ。口調は変わらずとも、尊大な態度が消えている。


 こっちが本当の性格なのか……? いや、まだ推測の域でしか無い。決め付けるにはまだ時期尚早だ。ともかく、今は相手の出方を見るしか無い。

 

 そう考え手に宿る光を解くと、マナティクスはいかる肩を下ろし、安堵してため息をつく。

 彼女は何も無いはずの空間に腰をおろし、直立する私を、見上げ、目を合わせた。


「……何から聞くつもりだ」


「え……そんな簡単に教えてくれていいの?」


 あっさりと言い始めようとするマナティクスに、私は心底驚いて聞き返してしまう。

 彼女だって、私が聞こうとしていることは見当が付いているはずなのに……


 しかし、驚く私を他所にマナティクスは下へ目線をやり、半ば投げやりな表情をする。


「貴様は転生者だ。その時点で、私と会って仕舞えば問いてくることは必然に近いからな」


「……そう。分かった、じゃあ最初の質問」

 

 少し驚きが残っていたが、面倒な手間が省けた事に変わりはない。

 私は、予定していた通りの言葉を発した。


「この世界は、何で常に月が満月なの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ