第三百四話 判明
ラウの新たな問いに、私は理解が追い付かずに固まってしまう。
しかし、一秒も経たない間にその意味を解し、今度は自分の言ってしまった言葉に固まった。
「……。……えっと、それは、ただの言葉の綾で」
「どう言う意味の言葉の綾なんだよ……?」
「……えっと」
不意打ちを喰らった為か、上手く頭が回らない。早く、早く言い訳を思いつかないと……!
どんどんと焦りが増していき、それと共に心臓の鼓動が速く、大きくなっていく。
時間が経てば経つほど思考力が失われ、私の頭が心臓の音で塗り潰されていった。
フレイも先程嫌悪的な態度を取った手前、私同様何も言えない。
必然的に、長い沈黙がその場を取り巻いていた。
「……サツキさん、あのさ……さっきのアレって、手品じゃ無いよな?」
「っ……、ど、どうしてそう思うの?」
沈黙を破って私へと言葉をかけるラウに、苦し紛れの言い訳に過ぎないが、私は質問を返した。
でも……言い訳ではあるけども、何でそう思ったのか、というのは実際疑問でもある。
「アレ……『変化』だろ? どんな物質でも好きなものに変えられるっていう……」
ッ⁉︎ な、何でそれを……『死神』の名前と一緒に、私のスキルの内容まで広まっているのか……⁉︎
ラウの言葉が、まるで銃で撃ち抜かれたかのような衝撃を私に与える。しかし、ここで驚いた表情を見せてしまえば肯定しているも同然だ。悟られないために、表情を固く強張らせ、驚きとも無表情とも取れない表情を私は勤めて貫いた。
「……」
しかし、言い訳はどうにも思いつかず、ましてや表情を固めてしまって口も自由に動かない。
結局のところ、私は沈黙を続けることとなってしまったのだ。
「……」
フレイも完全に沈黙し、顔を伏せている。しかし、その表情は強張ったもので、私の目でちらりと見ても汗が頬を伝っているのが目に映った。
一方ラウは、こちらをジッと見つめて、何かを考えているようだった。ボサボサで伸び切った髪を一切揺らす事なく、真剣な姿勢で私と向き合う。
「……サツキさんの話していた冒険譚に出てきた『変化』と、全く同じだった。緑色の光を出して何も無いところから、小麦と樽を作ったんだろ?」
その言葉が言い終わるよりも前に、フレイは驚愕の表情を浮かべて私の顔を反射的に見上げる。
そのフレイの表情を気にする間も無く、私はうっ、と小さく呻いて隠していた表情を露わにしてしまった。
「ラ、ラウ……」
「サツキさん……あんた『死神』なんだろ?」