第三百二話 反省
窓の先に、フレイがいた。
声をかけるわけでもなく、ただこちらをジッと見ているだけだったが、それでも私にはフレイからの圧がひしひしと伝わってくる。
「……あ、あはは……」
誤魔化すような作り笑いをして手を振るが、一向にフレイはこちらを見続ける。
しかし、溜まりかねたのか指先をこちらに見せ、窓を開けるような仕草をした。
……開けろ、と言う事だろう。
どうしようもなく、私は頭の中でどんな風に訳を話そうか考え込みながら立ち上がり、窓の取手を握って開けた。
「……やあ、フレイ」
「やあじゃ無いですよ、いったいどう言う事ですか?」
フレイの若干咎めるような声と、こちらをまっすぐと見る目に抵抗虚しく私は全て話した。
内容をかいつまんで、ひとしきり全て話し終えるとフレイは眉を曲げて唸り。
「……まあ、仕方が無いと言えば……無いですよね、はい。サツキはあの人を助けたくてやっていた訳ですから……」
眉間に手を当てながら、フレイは意外にも私の事を咎めずに許してくれた。
「え……いいの? 私すぐ帰ってくるって言って全然帰ってこなかったのに……」
「理由が聞ければそれでいいですよ。……あ、あと、先程は少し強めに言ってしまってすみませんでした。サツキにも葛藤が有ったはずなのに、それを考えない発言でした……」
私の疑問をさらっと受け流すとフレイはいきなり、しおらしくなって窓越しにも関わらず私へ頭を下げる。
「え、えぇっ⁉︎ ど、どうしちゃったのそんないきなり⁉︎」
直角に腰を曲げて謝るフレイに、私は慌て半分で目を丸くしていた。
フレイだったらもっと私を叱り付けるはず……いやそうじゃなくて! なんかさっきまでと比べてフレイの雰囲気が若干萎れちゃったみたいな感じがする。
「いえ、その……改めて考えてみたら、サツキは何も悪く無いんじゃ無いかって思えてきて……。全部、環境が悪いような気がしてきたんです」
何か私がこっちにいた間に一人で色々と考えていたみたいだ……。
もしかしたら、さっきの言葉も私が帰ってきたらすぐ言ってあげようなんて思っていたのかも知れない。……なんか申し訳ない。
とは言え、フレイが私の事を考えてくれるのは嬉しいけど全部環境が悪いと言う、のは少し……
「それは少し言い過ぎなんじゃ無いかな……?」
正直フレイは一人で考え込みすぎているところもあると思う。助けるにしたって、今頃他の方法がポンポン浮かんでくるし、少なからず私の責任はあるはずだ。
「そ、そうですか……? サツキがそう言うのでしたら私も改めて考えてみますが……あ、サツキ、彼はどうしましょうか……?」
視線の先を変え、フレイが私にそうひっそりと聞いてきた。
私もフレイの方へちらりと振り向く。当たり前だが、ラウがそこにいた。
困惑した表情を浮かべながら、彼はこちらをまじまじと見ている。
……さて、どうするべきか……。