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第二十九話 フェアラウス、退去

「消え……た……?」


 フレイは光となって消えたタケルの姿を見て唖然とする。

 十字架に遮られていた夕焼けは再び姿を現す。


 タケルが消えたことで島全体のマナが読み取れるようになったようだ。

 『変化』……取得。


「フレイ、後でしっかり説明するよ。できれば君とは隠し事を持ちたく無いから」


 私はフレイの目を見つめ、嘘偽りは持っていない、そう伝えるようにして話す。

 

「……わかりました。ちゃんと、説明してもらいますよ」


 フレイは光に照らされた顔を私に向け、頷きながら言った。


 彼女に見られてしまったからには、私も話すしか道はないだろう。

 オレンジ色になっていたフレイの顔と対照的に、私の顔は暗い色になっていた。


「ありがと、じゃあそこの船に乗ろう。あまりこの島には長居できない」


 私はフレイとウンディーネを引き連れて船にこっそり乗ろうと港を歩く。

 しかし。


「あれ……?お姉ちゃん達!リュウランのお兄ちゃんが居なくて、探しているんだけど……」


 ソウズ君が走ってこちらにやって来てしまった。

 まさか、こんなところで会うとは……彼になんと説明するべきか……


 私はソウズ君の目線に合わせるようにしゃがむ。


「……お兄ちゃんはね、遠くの場所へ行くことになっちゃったんだ。でも……もうあの子達がいじめてくることはないと思うよ」


「え……?どうしていじめなくなるの?」


 彼は不思議そうに問いかけてくる。

 そうか……そりゃそうだよな。彼には分かるわけがない。

 信用を利用するのは気がひけるが……いたいけな子供を悲しませるわけには行かない。


「お兄ちゃんが見守ってくれているからさ。安心してこれからは暮らせるよ」


 それだけ言い、私は立ち上がる。振り返る気には……なれないさ。

 



 その後、私たちは無事船に乗ることができた。船の中はまあまあな快適さで、金縁でかたどられたカーペットやシャンデリアまであった。


「いやはや、思ったよりも良いところだね。ソファも柔らかい」


 私がソファにもたれ掛けくつろいでいると、突如目の前に船の乗務員らしき人が来た。


「……失礼ですが、チケットをお見せいただいても?」


 その言葉を聞き、私達の顔は青ざめ、空気がピンと張りつめる。


「チケット……ですか?」


「はい、この船に乗るために買っているはずです。ないとおっしゃられるなら……それ相応の対応を」

 

 被った帽子から鋭い目がこちらを睨みつける。


 フレイは後ろで狼狽ているが、解決法ならある。

 その解決法とは……。


「お兄さん、お兄さん。これ、ほんの気持ちです」


 私は乗務員の手にあるものを当てる。


「……!ええ、ごゆっくり」


 乗務員はそれを受け取るとにこやかな顔になり、私達の前から立ち去っていった。


「サツキ、今何をしていたんですか?」


 フレイは乗務員の変わりように驚いて私に聞いてくる。


「……ふふ、賄賂さ」


 私は先程渡した物と全く同じ金の延べ棒を出した。




 船に乗ってそれなりの時間が経ち、人もまばらになってきた。

 ……伝える時が近づいている。


「サツキ……そろそろ聞いても良いですか?」


 フレイは周りに目を向け、若干心配そうだった。


「……うん、じゃあ話そうか」


 私はだらけきってソファに寝そべっていた体を起こし、語り始める。


「まずこの話をするには、王達について話さなきゃ行けない。今現在国を持っている王達はあまりにも強力すぎるスキルを持っている。それは、神に与えられたスキルだからだ。彼らはそのスキルを使って自分なりの国を作って……度々戦争も起きている。私はそれを見かねた神々に遣わされたんだ」


「神々に……?つまり……サツキのそのスキルは……」


 フレイは真理に触れたような顔をして私の方へ姿勢を傾ける。


「そう。私のスキルもあの王達のスキルと出処は同じ。そして今の王を全て片付けるように言われているんだ」


「だから……あのタケルは光に……サツキは、私が思っていたよりもずっと大変な使命を持っていたんですね……」


 フレイは俯いて悔やむように呟いた。


 けど、別に私は大変というわけではない。


「いや?私は自分が強くなっていく実感が楽しいし、むしろ回収は二の次というか……その時の気持ちでやっているってところかな」


 私は気楽にまた寝そべる。フレイを安心させたい気持ちも相まって、ちょっと強がるくらいに出てしまった。

 フレイは気がかりがまだ残っているのか、すこし不満げな顔をしながらも海の風景を見に行こうと外に出ていった。


「あんた、これで良かったの?彼女、満足はしてなさそうよ?」


 サラマンダーが鞘から私に聞いてくる。


「別に問題はないさ。今伝えるべきことは全部伝えた。それと……見ててよ、今から腰抜かすようなことするから」


 私は指を頭にちょんとつける。すると、私の体がどろりと溶け、液状になって床に染み出す。


「あ、あんたそれもしかして『変化』!?やめなさいよこんなところで!」


 サラマンダーは驚き、大声で叫ぶ。


「大丈夫大丈夫。別にバラバラになるわけじゃないんだから」


「そうじゃなくて!」

 

 サラマンダーは恥ずかしそうに刀身を悶えさせながら小声で言う。


「……あんた、服は変化してないから……それ……」


 その瞬間、私は時が止まったように固まる。

 あ……あ……。


「どうしよサラマンダー!?私今素っ裸だよ!?服どうやって着れば……!?」


「そんなの知らないわよ!あんたが勝手にやったんだからあんたがどうにかしなさいよ!」


「何をーっ!?」


 そのあと、フレイにこっ酷く叱られてことなきを得ました。

面白いと思っていただけましたら是非ブックマークとポイント評価をお願いします!

本日4時に番外編をあげたいと思います!

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