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第二話 中西沙月の転生

「頼むSSR来てくれっ……!」


 私は手を震わせ、10連ボタンをタップする。

 GHPに溶かした金たちの無念を晴らしてくれ……!

 私は手を組み、正座をして祈る。

 画面には次々とRキャラが表示されていく。

 銀、銀、銀。まるで祈りは通じない。もはや廃課金の私にも帳尻合わせがきたか……。

 そう思いながら半ば諦めていたその時最後の10個目にして、画面が虹色に光出した。


「確定演出だ!!」


 そう、これはGate/holy possible のガチャの確定演出である。

 虹の輪はその光を強めながら徐々に回転が速くなっていき、虹色に輝く羽が舞い散る。

 そして白い光が画面を包み込み、徐々に薄れて行く。

 なんと画面の先には、私が望むものが現れていた。


「や……やった……!SSR、正月限定ピックアップ確率0.01%!正月ヴィルヘルムゲットだー!」


 私は正座をしていた床から飛び跳ね、喜びを隠せないでいた。

 そしてここまでの低確率、やることは一つしかない。


「へ……へへ……早速掲示板でマウント合戦だ……!」


 PCのキーボードを手に取り、『正月ヴィルヘ持ってないやつおりゅ?』と書き込もうとしたが。


「沙月ー!ちょっと買い物行って来てよ!お母さん鍋見てなきゃ行けないから手が離せないのよー!」


 お母さんが階段の下から私を呼んできた。……そう、私は実家暮らしのニート。


 悔しいがマウントはスピードが命……!帰って来てからにしよう。


「はーい!了解りょうかーい!」


 私はお母さんに聞こえるように大声で返事を返し、パジャマ姿だったので無駄な物でパンパンのクローゼットの中に手を突っ込む。

 コートどこだっけ…?お、あったあった。

 よく分からないサプリやダイエット用品が詰まった中から、私はベージュのダウンコートを取り出して羽織る。


「それじゃ行って来まーす!」


 そのまま階段を駆け下り私はドアまで一直線に走る。そうしてドアまでたどり着きサンダルを履いてドアを開けようとした時。


「あんた財布忘れてるよ!これが無かったらいく意味ないでしょ!」


 私は後ろを振り返り財布を受け取る。


「あ、忘れてた。ごめんごめん」


 私は誤魔化すように笑いドアノブを握る。


「それじゃ、行って来まーす!」


 私は元気いっぱいにドアを開け、サンサンと降り注ぐ日光を浴びる。


 ま、眩しい……。

 外を歩くと、日光が降り注いで私の目が眩んだ。

 うん、どっちかっていうと日の光は嫌いだ。

 私は中西沙月。

 今年で27歳になるけど、働いていた会社が倒産しリストラされた。

 バリバリのキャリアウーマンだったが、中々就職も出来ず、今は実家に戻って日々を過ごしている。

 小さい頃から運だけには恵まれてきたけど、そのたびに後から不運が来るんだよね……。


 コンビニで牛乳とバナナをカゴに入れ、ついでにプリペイドカードも入れてレジに並ぶ。

 なんか前の人変だな。どこかソワソワしている……。

 黒いコートで厚着をしている上に、マスクとサングラスまでつけている。

 しばらくもしないうちに、前の人は呼ばれてレジへ向かう


 すると、なんと彼はナイフを懐から出し、店員に突き付ける。


「ありったけ金持ってこい!持ってこなかったら刺すぞ!」


 ご、強盗……!?

 まさか自分の不運のしっぺ返しがこんなところにまで来るなんて!


「てめえらも警察を呼ぼうなんて考えんじゃねえぞ!呼んだら全員殺してやるからな!」


 私はそう言われ、不意に手を上げた。

 すると、頭に何かが刺さる感触がした。

 ナイフ……刺さる感覚

 あー…これあれだわ。刺されたわこれ。

 不運のしっぺ返しが、死ですか…そりゃデカすぎませんかね……?

 九蓮宝燈かよ……。





 次に目を開けたときには目の前にお爺さんがいた。


「おお、若いの。お目覚めかの?」


 お爺さんは私ににこやかに話しかける。


「ここは……?」


「ここは天界じゃよ。わしは神のアスターじゃ」


「天……ってことは私……」


 死んだ……私死んだのか!?


「うむ、残念ながらお前さんは死んでしまったんじゃ」


「そう……ですか……」


 本当に私……死んじゃったんだ。


「なに、そんなに悲しむことはない。ところで、お前さんに一つ頼みがあるんじゃ」


「頼み……ですか?」


「ああ、転生してはくれんかの?」


「て……転生ですか!」


 まさか、アニメで散々見てきたあれを私ができるなんて!


「そうじゃ。とある世界を救って欲しくての……」


「喜んで!魔王に侵略されているんですか?それとも宇宙からの攻撃を防ぐとかですか?」


「ああいや、先に転生した者どもを回収して欲しいんじゃ」


「……回収?」


「実はもともと魔王がいたんじゃが十数年ほど前に老いた転生者が倒したんじゃ」


 えっと、じゃあ解決……したのかな?


「つまりそのおじいちゃんを回収しろと?」


 私がそう聞くとアスターと名乗った神様は首を振る。


「ああいや、その転生者は……ともかく、その間も若い転生者は送り込まれておっての、流れ作業なんじゃよ。

 いちいち一人がどうなるかなんて見守っておれんじゃろ?」


 神様って効率主義なのね……

 私はそんなことを考えて苦笑する。


「それでの、暇を持て余した転生者達は298人もいて、自分のスキルを使って国を作り上げたんじゃ」


「え……じゃあ別に回収しなくても良いじゃないですか。平和なら問題ないですよね?」


 私が意見を述べると、アスターはまたも首を振る。


「平和じゃないんじゃよ。国の頭たちがこの世界をどうしていくかで争い始めたんじゃ。

 このままの自然あふれる世界か、科学と魔法で作られた理想郷か。

 争ってばかりで魔王がいた時よりも争いが激しくなっておる」


「なるほど……それで私に間引きをしろと言うわけですね?」


「うむ、そういうことじゃ」


 一つの脅威が消えれば皆争い始めるってのは人間の性か…。


「そういえばさっきスキルとか言ってませんでしたっけ?」


「おお、そうじゃそうじゃ。スキルはここから引いてもらおう」


 そういうと神様は、どこからともなくガチャガチャを出してきた。


「あの、これガチャガチャですよね……?」


「うむ、何が出てくるかは運次第じゃ」


「はあ……やってみます」


 運次第、か……吉か凶か……。


 私はつまみを握り、右に回す。ガチャガチャは音を立てながら赤い玉を出した。

 私はそれを手に持ち昔よくやっていたように両手で開ける。

 中には、文字の書かれた紙切れが一枚入っていた。


「ん……『複製』?」


「おお!それはスキルを複製できるスキルじゃ!

 ただ、実物を見てどうやって発動するのかを理解しないと行けないのじゃが……」


「どうやって?それってどういうことですか?」


「この世界にはマナというものがあっての、体内に吸収したり外のマナを使ったりすると、スキルと呼ばれる固有の力、そして魔法が使えるんじゃ」


 魔法か……!流石ファンタジー世界なだけはある……!


 「スキルはどんな生物でも必ず一つは持っているんじゃが、転生者が持っているのは大抵規格外のスキルなんじゃ。どんな者でもの」


「この……『複製』もですか?」


 まあ転生者がウジャウジャいるって事はそのスキルも全部覚えられる訳で……。


 「うむ。そしてスキルは空気中のマナを使ってあらゆる物に干渉することで発動するから、その操作方法を覚える必要がある……と言っても大抵皆分かる物での。じゃが、若いの。お主のはちと具合が違う。後付けなんじゃよ」


「後……付け……ですか?」


 私はアスターの言葉をオウム返しにして聞く。


「後から見て聞いてやり方を理解する。常人にはこれができないのじゃ。キャパオーバーしてしまうからの」


「はー……なるほど……」


「さて、そろそろ出発してもらおうかの。この石を渡しておこう。回収するときに使ってくれ」


 神様がそういいながら私に黄色い石を渡すと、私の座っていた場所を中心に魔法陣が現れた。


「ありがとうございました!必ず回収してきます!ところで、私の体って今どうなっているんですか?

ナイフで刺されたと思うんですけど……」


「む?いや、紙切れが当たったのをナイフと勘違いして死んだんじゃよ」


「……え?」


 紙切れ……?もしかしてプリペイドカード?


「納得いきません!せめて、せめてそこのやり直しだけでも!」


「無理じゃな」


       「そんなああぁぁーー!!!」




転生者全員回収まであと298人!

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