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第二十八話 安らかな死を

 フレイが倒したと思われていたタケルは、私たちの目を盗んで逃げていた。

 最後まで往生際の悪い奴……。絶対に逃さない。


「でも、どうやって探すのよ?痕跡なんてどこにもないわよ?」


 サラマンダーが土と落ち葉で包まれた地面を見て私に聞く。


「うん……まずは今わかる情報から読み解いていこう。

 タケルがいたこの場所、ここの土だけ抉り取られている。おそらく『変化』で土を自分の肉体に馴染むように変化させたんだろう。

 そして、私たちが見ていなかったのは僅かな時間。逃げるときに流れる血は表面から消えているけど……」


 そう言いながら、私は地面に落ちた落ち葉を数枚つまみ、ひっくり返す。

 そこには僅かであったが血の跡が残っていた。


「あ!血の跡が……!」


 フレイはその血の跡を見て声を上げる。


「そう、全部証拠を消せるほど彼は時間を持っていなかった。この先だ、行こう。」


 そう言って私は立ち上がり走って行った。


 



「見つけた……もう逃さないぞ!」


 私達は血の跡を辿って走っていき、港に出た。

 近くの船に乗ろうとしていたタケルを見つけたのだ。


「お前……自分の島を捨てるのか?」


 船に乗って別の場所へ逃げる。それはこの島の放棄、見捨てることに他ならない。


「別に良いさ、ここの政治をしているのは別に俺じゃねえ。評議会の連中の管轄さ」


 タケルは息を荒くしながらも、思っていたよりかは落ち着いていた。

 評議会……?王に対抗する勢力があるのか……?


「評議会って……何さ?」


 私はタケルから最後に情報を聞き出すために聞いてみる。


「別に俺に聞かなくてもいいだろ?お前はコウキのスキルを持っているんだからよ……クク……しかしまあ、いいだろう。評議会ってのは王になることに賛成しなかった転生者の連中と、その意思に従う人間達で作られてるもんさ。俺も王になったはいいものの雑務が面倒だったんでな……実権は全部あいつらに握らせてやったさ。

……さて、全部話してやったが?どうするつもりだ?」


 もちろん、最後は始末する。そして今こそ最後だ。


「フレイ、攻撃の準備を。磔にする」


 私はサラマンダーを構え、フレイは棘を突き刺す。


 私はすぐにタケルの目の前まで行くが、タケルは拳を振り上げて抵抗しようとする。

 もちろんそこは防御済みだ。フレイの武器を借り受けて拳の攻撃は私に当たらない。


 そしてサラマンダーで切るのでは無く、足で空中へと飛ばす。

 飛ばされた先にはフレイが構成しておいた十字架があり、タケルは打ち付けられる。


 磔にする。先ほど言ったように、私とフレイはお互いに剣と槍を構え、タケルの掌を貫く。


 貫き、両手を十字架に貼り付けられたタケルは、さながら聖書の人物のようであった。


「もうこれで回復は出来ないはずだ。安心して君を天界に送ろう」


 そう言い、私は懐から石を取り出す。


「っ!?てめえ、まさか……まさかそれを使う気か!?やめろ……やめてくれ……それだけは……!」


 タケルは何かを懇願しているようだが、元々これを使うためにきたんだ。今更やめるわけにはいかない。


「サツキ……?何をするつもりですか……?」


 フレイはタケルの豹変っぷりに怯えたのか、私がまるで今から殺人でも行うんじゃないかと言ったような目を向ける。


 私は無視して、身動きが取れずジタバタするだけのタケルに向かって石をかざす。

 タケルはコウキと同じように、淡く輝きだし、光に包まれて行く。


「やめろ……いやだ……嫌だ嫌だ……嫌だああぁぁぁぁっ!」


 最後まで叫び声を上げながら、タケルは消えていき、後には突き刺さった二本の得物が残っているだけだった。






 一方その頃。


「コウキ殿に続き、タケル殿も奴らに遭遇したらしいが、貴殿らは如何する?」


 和風の着物を着た時代錯誤のような男は他の六人に伺う。


「そうねぇ……あたし怖いから、同盟でも組みたいんだけど……」


 赤い鎧を身につけた女は周りを見回す。


「それはいいアイデアじゃ!妾も金が足りんくてのう。ウチの部隊でもいくつかやるから、是非組みたいんじゃが……」


 ゴスロリの服を着た小さな黒髪の少女は嬉しそうに言う。


「ならんならん!貴殿ら、自らの力にもっと自信を持たなければ!同盟等弱さの現れ!そんなことは取りやめて___」


「じゃおっさんだけ入らなけりゃ良いよ」


 男が立ち上がり、拳を握って熱弁を奮っていると、それを遮って声が差し込む。


「……エヴァー殿、今何とおっしゃった?」


「入らなけりゃ良いって言ったんだ。あんた以外、全員これには賛成だよ。いつまでもちっぽけな誇りに囚われてちゃこっちもやっていけないの」


 声の主人は黄緑色の髪をした少年だった。うざったそうに、少年は男を見下す。


「ぬぬぬ……ならもう結構!拙者、この会から抜けさせて頂く!貴殿らのようなひ弱な人間には負けはせんぞ!」


 そのまま男はきらびやかに飾られた部屋から腹を立てて出て行った。


「……ちょっとエヴァーくん、あれは言い過ぎだったんじゃないの?ヘイハチさん、ああ見えてナイーブなんだから」


 女は少年に向かって注意を促すが。


「いや、これくらいで良いさ。僕らは評議会じゃない。でも、危険分子は排除しないと……」

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