第二百七十九話 別物
唖然とするホークアイに、フレイは息をつく間も無く畳み掛ける。
「あなたとサツキが同じ? 違いますよ、まるで違います! 彼女は、私達を理解しようと歩み寄ってくれました! 彼女は、私達と一緒にこの旅を続けてきたんです! 彼女の力なら、私達なんかむしろいない方が良いほどなのにです! サツキ、それは何故ですか⁉︎」
「____! それは、私が皆と一緒に居たかったからだ! 最初はただただ戦力とだけしか考えていなかった。けど!」
フレイに問いかけられ、私も、私の思っていることをはっきりと言った。
それは嘘偽りのない言葉で、この時だからこそ言えた、心の底からの気持ち。
「守りたいと思ったんだ! ぶつかって、バラバラになってしまう時もあったけど、それでも私は皆を切り捨てるなんて考えは全く、浮かばなかった!」
ホークアイの顔には最早笑顔など無く、こちらへ歯軋りするかの如く睨みつけていた。
でも……何も怖くない、今私の横には仲間がいる。
「ホークアイ! 私とお前が似ている事は認める。でも、断じて同じなんかじゃぁ無い! 私には守るべき仲間と、向かうべき使命があるんだ!」
そう、ホークアイに向かって叫んだ。
そう、私には守るべき仲間がいる。……それと同時に、共に戦うべき仲間でもあるんだ!
「……仲間仲間と、五月蝿いんですよ……。そんな物、足手纏いになるだけです。必要なのは、絶対的な一。
群がる蝿ほど、煩わしい物は無い!」
まるで私達が全て間違っているかのように、彼はそう言って一蹴する。
その顔は余裕を浮かべるような笑みを見せるが、端々がひくひくと動き、怒りを隠せないでいた。
「……さて、くだらないお喋りもここまでです。あなた達が無駄な時間つらつらと喋ってくれたおかげで、すっかり身体も元通りですよ」
気づくと、ホークアイの身体についていたあちこちの傷はどこにも無く、服の裂けた部分から肌色が出ていた。
あれも、『研鑽』の力……心臓を撃ち抜かれても、首を折られても生き返るほどの治癒能力と、何度も断裂を繰り返した強靭な筋肉からの身体能力。
それに……何度も、何度も浪費し続けたマナを貯蔵する臓器は、フレイの限度量を遥かに超える貯蔵量。
……芦名の言っていた通り、あれの原理は筋トレと同じだ。損傷した筋肉は、再生する際に次は損傷しないようにと、それに耐え得る筋肉を作り出す。
それが……奴のダメージ、不足、不満、全てに適応している。しかも、鍛えれば鍛えるほどに強くなり、そこに限度は無い……だからこそ、あれはホークアイの『研鑽』の結果なんだ。
「……そこに至るまで、一体何が有ったのか……私には知る由もないし、ましてや知る権利もない。
だから……ホークアイ、全力で、お前を殺す」