第二百七十八話 執着の理由
フレイは、その一言をホークアイに向かって投げかけた。
場違いな程に落ち着いた声、そして彼女の起こした行動に、私とホークアイは固まる。
フレイ……今、質問したのか……⁉︎
この場で⁉︎ しかも、明らかに敵意を剥き出しにしたあいつに向かって!
……どうする? フレイが行動を起こした以上、ホークアイだって黙っていない筈だ。
……でも、フレイを……信じてみるか? フレイに頼るって言うことは……それと同時に彼女を信じることなんだから。
「……」
ホークアイはフレイへの質問に数刻沈黙した。
しかし、何か彼の中で思う物があったのか、何も言わずに手の中の光を霧散させると。
「……良いでしょう。冥土の土産に教えて差し上げましょう」
私達が攻撃の構えを解くと同時にそう言い、苦しげではあったが身体の姿勢を正常なものに戻す。
フレイは……彼に何故私に執着するのかと聞いた。
それは、先程も二人で話していた物……フレイはそれほどにホークアイの素性が気になるのか?
それとも、何かの時間稼ぎか……どちらにせよ、話している途中でホークアイの気がいきなり変わるなんて事もあり得る。私のするべき事はホークアイがいつ攻撃してきてもいいように警戒しておく事だ。
だが、私自身ホークアイが何故私を狙うのか、常々気になっていたところだ。聞けるのなら聞いておきたい。
「私がサツキさんを狙う理由は……ただ一つです。サツキさんと私は、同じなんですよ」
躊躇う様子もなく、ホークアイはそう言った。
「同じ……?」
「ええ、そうです。同じです」
予想もしていなかった言葉に、私はホークアイの言葉を鸚鵡返しに聞き返す。
彼もまた、口元に笑みを浮かべてその言葉を繰り返した。
「私もサツキさんも、他人の気持ちがわからない人間なんですよ。貴方は仮面を被って皆が望む役を演じているに過ぎません。その根底は他人はおろか、自分自身の想いすら分からない狂人」
演じているに、過ぎない……
その言葉を、私は前にもサラマンダーに言われた。
「私も同じです。と、いうか……自分以外が理解できないなら、そこに興味はありません。理解ら無いものはそこまでですから。
……しかし、貴方は違う! 一目見て分かったんです! 私と同じような人間であり、誰にも理解されてこなかったのだと!」
……確かに、小さい頃から私は……ずっと、周りから敬遠されていた。
だとしたら……彼の意見も、否定はでき___
「ふざけないで下さい」
ホークアイの言葉を叩き割るように、フレイは静かな、しかしよく通る声でそう言った。
フレイは、ホークアイの意見を真っ向から否定したのだ。
「……は?」