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第二百六十九話 立方体

 私がそう考えているうちに、フレイは立方体を宙に放り投げる。

 その瞬間、立方体は目も眩むような光を発し、目の前には、紫色の裂け目のような物ができていた。


「……これ……」


「この先を行けばすぐに戻れます。……サツキ、本当にお疲れ様でした、私達がここに来るまで……大変でしたよね」


 フレイは私の顔を見て、慈しむような口調でそう言う。

 嬉しそうに微笑んでいたが、その笑みの中に何処か申し訳なさそうな雰囲気が感じられた。


 この先に足を踏み入れれば……帰れるのか……。

 ウンディーネとサラマンダーがお互いに憎まれ口を叩いて、それを耳にしながらフレイと駄弁って、上を見上げれば青空がある……そんな場所に……。


 夢では無いかと頭の奥でそんな考えがよぎってしまう。皆が迎えに来てくれたことが、心を温めてくれる。

 ……でも。


「皆、私は最後に行くから、先に行ってて」


 後ろを振り向き、私はそう告げた。

 しかし、それが意外だったのかウンディーネやフレイは困惑しているような表情をする。


「ど……どうしてですか? まだ何かやり残した事が……」


 恐る恐る聞くフレイに、私はゆっくりと首を横に振った。


「いや、もうやり残したことなんてないよ。ただ……私の戻りたい場所は、皆が居る場所だから」


 どんなに青空の広がる平和な場所でも、横に仲間がいなきゃ意味がない。

 もう……離れるのは勘弁だ。


 しかし、そんな私の思考など露ほどにも感じていないのか、フレイはほっとしたような表情を浮かべ。


「はぁ……だったら良かったです。ここでまた別々になるなんて、私も嫌ですから」


 心底安心したようにそう言葉を漏らしていた。

 ……どうやら、考えている事は同じみたいだ。


「じゃあ私から!」


 不意にイレティナの声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には私とフレイの間を走り抜けて裂け目へと一気に飛び込んでいった。

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