第二百六十二話 恥
「……え? それってつまり、じめ___」
「それを言わないでくださいってば!」
自滅したってこと? と、口に出しかけた瞬間、フレイが汗を垂らしながら囁く。
分かれと言わんばかりに目を見開き、フレイは目で横を指し示す。
そこには、こちらの声が多少聞こえていたのか、沈黙はそのまま、私たちの方とは真逆の方を向いているウンディーネがいた。
……ウンディーネはあの具合だと大分恥に感じているっぽいけども……。
「ウンディーネ、別に気にすることじゃ無いと思うよ?」
そう一言呼びかけると、ウンディーネはこちらへチラリと顔を見せて振り返る。
一応事実として聞きはしたけども……馬鹿にしているわけじゃない。
目を合わせるために腰をかがめて、その目をしっかりと見据えた。
「頑張ってくれていたわけだし、むしろありがたいって程だよ」
そう呟きながら私はウンディーネの頭に手をかざし、それに伴って僅かに緑色の光が彼女に宿る。
その瞬間、彼女の足元から彼女と同じ透き通る青色の物が溢れ出した。
「……!」
ウンディーネは驚く様を見せるが、それでも一人でに青色の物質は溢れていく。端々がだんだんと彼女を包み込んでいき、女性の姿を形取っていく。
一瞬にしてその工程が終わると、そこにあったのは、紛れもないいつものウンディーネの姿だった。
「……これ……」
「『変化』。サラマンダーの傷とは違ってウンディーネのマナの身体の方は傷ついていなかったからすぐに直せたよ」
ウンディーネはすっかり治った自分の身体に驚いているのか、元の大きさに戻った自分の両手を見る。
しかし、その行動は一瞬していただけで、すぐにその視線は私の方へと移った。
「……恥ずかしいったらないわよ。助けに来たのに助けられるなんて」
「もう助けてくれたでしょ、私はそれで全然ありがたいんだから! さ、行くよ!」
私がそう言うと、ウンディーネは少しもどかしそうにしていたが、すぐに仕方がないとでも言うふうに笑って、私のそばへと寄った。
*
「……さて、ここがサラマンダーとヴィリアの居る場所……か」
壁や床は、やはり相変わらずだ。
……しかし、目の前の雰囲気が違う。人が大量にいて、何かを取り囲んでいるようだった。
その中心には、燃え上がるような火柱が幾十にも重なって噴き上げては消えていく。
……あれは……サラマンダー……⁉︎ いやまさか、サラマンダーは今あんな風に炎を出せないはず……!