第二百五十四話 違和感
拭きれない違和感に、私は横にいたフレイにだけ聞こえるように声を潜ませ。
「ねえフレイ。なんか、この転生者達変だよ……? 何というか、すごく弱い」
自分の気になっていることを率直に言ってみるものの、彼女は私の言葉にキョトンとするだけで、全くピンときていないようだった。
「弱い……ですか? 確かに、こうも屋内で限られた場所で戦えば、いくら転生者でも弱くなるとは思いますが……」
「そうじゃないんだ。いや、もちろんフレイの理論も間違っているわけじゃない。……でも、それでもやっぱりおかしいんだ。神から渡されたスキルはこんな物じゃない」
今まで会ってきた王だってそうだ。
コウキの『万物理解』にしろ、タケルの『変化』にしろ……その力は一線を画している。
私達は今までそれに対してタイマン……いや、むしろ相手よりも多い数で挑んでギリギリ勝っていた。
それなのに、なんだ……これは? 目の前にある現状を疑ってしまう程に彼らはスキルを扱えていない。
『万物理解』で見るだけでも、『圧縮』、『成長』、『篝火』……字面こそ大した物ではなさそうだが……単純に、強い。彼らの持っているスキルには何の問題もない。
こちらに考えもなしに飛び込んでは、物理的にどうにかしようとする……本当に戦い方を忘れてるんじゃないのか……?
「……サツキ、もたもたしている暇はねえぞ」
ふと、私の耳にアシナの声が飛んできた。
彼のいる方へと目をやると、表情に少し焦っているような色が見える。
「何を考えているかは知らねえが……今は、それよりもやるべき事がある。……行くぞ」
……確かに、そうだ。ずっとこれを考えていたら、ウンディーネやサラマンダー……それに、フレイに出来た新しい仲間すら彼女から失わせてしまう。
……フレイの悲しむ姿は見たくない。皆で私を助けに来てくれて……何より、私自身彼女が大好きだ。
「分かった。全員……蹴散らそう」
手の内に光を集めて、私はそう一言呟いた。
フレイも横で槍を生成して、すでに戦闘態勢だ。
……やるか