第二百四十八話 再会
気付くと、私の意識は元の場所に戻ってきていた。
目の前にはサツキの背、そしてその肩を掴む私の手がある。
……やっぱり、サツキの様子は変わっていないか……。
私が、サツキの気持ちに気付いてあげなければいけなかったんだ。
サツキ自身も言っていなかった、誰かに分かって欲しかったことを……。
「サツキ……あなたの求めていた事は……きっと、誰もが当たり前に思っている事なんですよね。
でも、だからこそ誰も気付いてあげられなかったんです」
私は肩に置いていた手をサツキの首に回し、サツキを抱き寄せるようにして語りかける。
彼女に言葉が届くように、今まで話せなかった分ゆっくりと言葉一つ一つを噛み締めながら。
「私も、気づいてあげられませんでした。今になってですけど、それは本当に……謝りたい気持ちでいっぱいです。でも……でも、それ以上に、あなたに言わなければならない事が有ります」
「……」
腕に、一瞬何かが動くような感覚を覚える。
それでも私は、その言葉を続けた。彼女に……サツキに、皆がかけるべきだった言葉を。
「私をオークから助けてくれた時……逃げ掛けはしましたけど、あなたは見捨てないでくれました。
イツが自分自身の仲間と生涯の別れを決意した時も、協力してくれました」
今までの思い出を振り返るように、ゆっくりと、語っていく。
「私が王に拐われた時にも、危険を顧みずに城まで来てくれました。フェアラウスでは、いじめられていたソウズ君を助けてあげました。ヘイハチさんの頼みも聞き入れて、あんな酷いことを言ってしまった私を、また仲間と言ってくれて……」
気付くと、私の目の前には、サツキの後ろ姿は無かった。
代わりにあったのは。
「……フ……レイ……」
……彼女の、こちらを振り向いた顔だった。
酷く怯えて、疲弊した顔つきで、こちらを振り向くのもやっとだった事がわかる。
「……勇気を出して、こちらを振り向いてくれたんですね。また一つ、増えました……。
サツキ、今までのみんなの分も合わせて、全員を代表して言います」
彼女の両肩を掴み、お互いに面と向き合って、私は。
「……今までも、そしてこれからも、ほんっっとうに! ありがとうございました!」
*
「___ハハハハ! あの小娘、私にヤケで放った技で倒れましたか! これは、また……アッハッハハ!」
壁の向こうから、嘲笑うような声が聞こえてくる。
この目覚めは二回目だ……。何度やっても、本当に鬱陶しい。
……でも、今はその気持ちだけじゃ無い。
「ハハハ___は?」
目の前の壁が、ドロドロと飴のように溶けていく。
その向こう側には、唖然としたシルクハット野郎の姿と、地面に倒れて、ボロボロになったフレイがいた。
「……ただいま、フレイ」