表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

242/681

第二百四十話 心の壁

 行けない…? いや、この男の言葉をそのまま受け取ってはダメだ。きっと私を惑わそうとしているはず……。


「な、何をふざけた事を……。イレティナの届けてくれた矢で、壁はこの通り、に……」


 私は揺るがぬ証拠とばかりに、薄ら笑いを浮かべるホークアイに見せつけようと振り返る。

 しかし、そこには開けた空間はなかった。代わりにあった物は……


「ま……また、壁……⁉︎」


 先程の漆黒の壁と比べ、暗い空間であるにも関わらず蒼い色を放ち、自ら光っているようであった。

 波紋のような物が所々に発し、水のような印象まで受ける。


「あの壁が、貴方をここで足止めするのですよ」


「……にしては、簡単に破れそうじゃ無いですか。イレティナの託してくれたこの力なら、どんな物だって貫けます!」


 イレティナの矢なら、あんな壁は問題では無い。

 一瞬驚いてしまったが……何も心配する事はないだろう。


「……ふふ……そうですか……」


 ホークアイは私が矢を握りしめているのにも関わらず、静かに笑ってこちらを眺めている。

 

 ……何がそんなにおかしいんだ? ……気にはなるが、やるしか無い。


 後ろ髪を惹かれる気持ちになりながらも、私は再び壁の前に立ち、強く矢を握る。


 サツキ……今、助けます!

 

「はぁっ!」


 私は矢を振りかぶり、壁に向かって黄金に光るその矢尻をぶつけた。

 壁は貫かれ、ヒビと共に砕け散っていく……()()()()()


「いくら物質を全て破壊できようとも、模造品に過ぎませんからねぇ……ふふふ……最も、本物だったら貫けていたかもしれませんが……」


 壁には、傷一つついていなかった。

 ぶつかった矢は反動で弾かれ、床にカランと音を立てて落ちる。


「……は……? そんな、まさか。こんな壁一枚ぐらい、簡単に___」


「だからさっきから言っていますでしょう。その矢は模造品なんですから、すべてを貫くと言う力だって劣化しているんです」


 やれやれとでも言うように肩を竦めて、ホークアイはそう言う。

 

 何故この男が部族の矢の事を……⁉︎ いや、それよりもさっき言っていた事……物質しか貫けない……?

 他のものに干渉しているんだから、あの壁だって物質に決まっているはず……


「その壁は精神の壁。彼女、サツキさんの心にある壁を具現化したものです。

 解除方法はただ一つ……ええ、私は親切ですからね、教えて差し上げましょう。解除方法は、サツキさんの求めていた事を叶えてあげる事です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ