第二百三十九話 幻影
どうやってここに……⁉︎ アシナがこの男を見逃すとは思えないし、何か特殊な仕掛けでもあるのか……⁉︎
……いや、それよりも。
「一体どの面下げて私の前にやって来たっていうんですか……あなたが、サツキをこんな危険な目に合わせたというのに!」
私がそう叫ぶと、空中に槍が形成されていく。照準は確実にホークアイの方へと向き、その胸元を捉えていた。
「『神滅槍』!」
そう叫ぶと、槍はホークアイの方へと飛んでいく。
一秒も必要とせずに槍の先端がホークアイの胸元へと触れ、その胴体を貫こうとした瞬間。
「ほう……これが貴方の新しい技、という訳ですね?」
槍はホークアイの身体をすり抜け、地面を抉り取った。
ホークアイは平然とした態度を崩さず、こちらへ歩んでくる。
「ッ……⁉︎ 『無限連撃』、『絶対聖域』!」
私は更に短剣をホークアイへと連射しながら、身を守るための壁を作った。
雨の様に降り注ぐ短剣は地面や壁にまで当たり、粉塵を巻き上げる。
『神滅槍』が……当たらなかった……いや、あれはどちらかと言えばすり抜けていた。
何か特殊なスキルなのか……? もしそうなら、ホークアイに攻撃を当てるのは難しい……。
……だからと言って、ここであの男を生かしておくわけにもいかない。
とにかく、何か手立てが見つかるまでやり過ごさないと___
「残念ですが、当たりませんよ。貴方の攻撃」
せせら笑う様な物言いで、短剣が未だに降り注ぐ煙の中から、ホークアイがのっそりと出て来た。
その身体中を短剣が貫こうとしているのにもかかわらず、霞のように通り抜けて行く。
「そんな……!」
ホークアイは口元に笑みを浮かべながら、私の方へ更に歩み寄る。
「くっ……!」
更に火力を上げるが、まったくもってホークアイの体に変化は無い。
遂に、ホークアイは私の目の前にまで到達し、腕をこちらに伸ばした。
まずい……攻撃される……!
しかし、ホークアイが私に伸ばした腕は、わたしの体をすり抜けていき、ただ空を切るだけだった。
「……え……?」
な、何が起きた……? 今、私の体を、ホークアイが___
「ああ、そう言えば伝えていませんでしたね……。この身体はホログラム、貴方でも分かるように言えば……幻影、ですかね?」
幻影……⁉︎ という事は、本体は別の場所にいる……と言うことか?
この男を前にして何もできない事は癪ではあるが……危害はこれ以上加えられないと考えれば悪いことではないだろう。
「幻影……理解しました。それで、そんな何もできない貴方が一体何をしに来たと言うのですか?」
「ああ、それはですね、これ以上、貴方たちは先にいけないと言う事ですよ」
……何だって?