第二百三十一話 反対
「……え?」
姉さん……って、誰の事を言っているんだ……?
そう言えば、以前そんな言葉を何処かで聞いたような……そうだ、サラマンダーを見て確かそう言っていたんだ。
……と言う事は、姉さんと言うのはサラマンダーのことを言っているのか? 口調も……どこと無く似ているし。
でも、それはつまり。
「全員で、ってのは確かに無理ね……でも誰かがここで残れば……出来るわよ」
そんなことを言いながらウンディーネは手早く私の身体を包み込んでいく。
そのまま私を持ち上げると、イレティナの方へ顔を向けると。
「イレティナ……ここで私と一緒に残ってくれるかしら?」
真剣な声色で彼女の顔を見て言う。
イレティナは何かを察したかのように、一瞬ハッとすると、覚悟を決めたかのようにゆっくりと頷く。
「ちょ……ちょっと待って下さい! 二人とも……まさかヴィリアとサラマンダーのしている事をやるつもりですか⁉︎」
ここに来てまた二人離れてしまうなんて……そんな事をしたらサツキのところにたどり着く前にやられてしまう。
そんなこと分かっているはずなのに、どうして残るなんて……!
「少し違うわ。……まず最初に、フレイ、あなたを私とイレティナ二人で向こうへ飛ばすの」
飛ばす……? 確かにイレティナの脚力も加わればできないことも無いかもしれないが……
「でも、そんな事をしたら下にいる敵が……」
「勿論分かっているわ。だから、私達は出来るだけあなたを守る。あなたにも多少は防御してもらう必要があるでしょうけども……」
ウンディーネは私へ面と向かって話す。矢継ぎ早に説明したいのも分かるが、そもそも私はそれに納得行っていない。
そう言おうと、口を開いた時。
「ちょっと待て、俺はどうするんだ?」
アシナが私に割り込むようにしてウンディーネに聞く。
アシナまでやるつもりなのか……⁉︎
「そ、それ以前にです! ウンディーネ達がここに残るなんて、私は反対です! 何か他に方法が……!」
「その方法を考える時間が無いのはあなただって分かっているはずよ、フレイ。今一番良い方法はこれなの」
必死に反対の意を述べる私に、ウンディーネは冷酷と思えるほどの返答をした。
……だが、確かに時間が残っていないのは事実だ。サラマンダー、ヴィリア、サツキ……ここで時間切れになっては元も子もない。
「……確かに、皆を失うのは、嫌です……」
「……そうね。私も、誰にも欠けて欲しくないわ。だから……三十秒以内に、なんとかして頂戴ね」
ウンディーネは、サラマンダーとよく似た悪戯げな声色でそう言った。