第二百三十話 切り抜ける方法
男の体の半分が消し飛び、下半身と、イレティナを掴んでいた腕のみがその場に残っていた。
「うっ……」
男の脚が地に伏すと同時にイレティナも拘束を解かれて、その場に尻餅をついた。
イレティナはすぐに立ち上がり、再び構えを取る。
良かった……イレティナ自身特に外傷は無いようだし、間に合ったらしい。
だが……私の予想が正しければ……。
そう思って、私がイレティナに向いていた視線を前方にずらした時。
目の前にはすでに、私の方へ飛びかかる人の姿が有った。
「ッ……! 『絶対聖域』!」
私の声に連なって、前面へ結界が張られる。
相手の繰り出そうとしていた拳は阻まれ、再び新たな攻撃がやって来るよりも先に、結界は敵と私たちを隔てるようにしてその守りを築いた。
……予想ができていたから今の攻撃は防げたが……『絶対聖域』も長くは持たない。
イレティナを助ける事を選択した以上、新たな作戦をすぐにでも考えなくては……。
「……ねえ……フレイ?」
「すみません、少し考えさせて下さい」
不安げにウンディーネは私に呼びかけるが、今は兎に角、新たな作戦が必要だ。
あの大量の敵……改めてだが、恐ろしい。場所こそ限定されているものの、あれらは王。
ヴィリアとサラマンダー……スキルや炎等の攻撃的な物の扱いに長けている二人がいれば、この戦況も力押しで勝てたかもしれないが……。
今はどちらもいない。ただただ戦うだけではどうしようもないだろう。
……だったら、今の戦力で出来る最高のやり方でやるしか無い。
「……定まりました。まず、アシナの『無限』のマントを盾に、進んでいきます。その後ろから私達が攻撃をして……そうすれば少しづつではありますが、前には進んでいけます」
私は自分の考えられる最高のやり方を皆に提示したつもりだった。
しかし、それとは裏腹に三人の反応は芳しくなく、どこか悩むような表情をしていた。
「ねえ、フレイ。それだと、ヴィリアとサラマンダーが……」
「あ……」
ウンディーネに言われ、思い出した。私達には時間が残されていない事に。
……しまった、冷静さを欠いていたようだ……。だとするならば、すぐにでもここを突破できるような方法を……。
いや、そんな物あるのか? この奥を埋め尽くす敵をそんな一瞬で切り抜ける方法なんて……。
考えては見たものの、いくら考えても良い考えは全く浮かばなかった。
……皆で突破するには……どうすれば良いんだ……?
「……フレイ、思い浮かばないんでしょう?」
私が悩んでいるように見えたのか、ウンディーネがそう聞いて来た。
その声は、どこか優しげな雰囲気で……。
「しょうがないわね。……私も、姉さんと同じことをするしか無いわ」