第二百二十五話 岩の壁
「そいやぁっ!」
掛け声とともにサラマンダーは前へと突き進んでいった。
私の言った通り、敵を無視して、隙間を縫い、掴もうとしてくる敵の手を紙一重でスルリとすり抜けていく。
しかし……このままでは私達の方が置いていかれてしまう。
あんな風に飛ぶ事は出来ないが……私は、私のやり方で!
「『仮神翼』、『絶対聖域』!」
私達を取り囲むようにして球状に障壁が現れ、敵と私達の間を隔てる。
それと同時に翼が現れ、私を除いた四人を抱え、準備が整うと。
「全力で行きますよ……! はぁっ!」
地面を蹴り、私は突撃をするかのように滑空する。
目まぐるしく景色が変わるようなスピードで、突き進んでいくが。
「逃さんッ!」
目の前にいた敵が腕をこちらへ突き出して叫ぶと、唐突に金属でできていた地面が割れ、そこから岩の塊がどんどんと隆起していった。
塊は横に並ぶように次々と現れ、私がそこまで後もう少しという所で完全な壁となってしまった。
岩は頑強であり、この地を支える大切なものだ。力強く、雄大だ。それを操るスキル……なのだろう。
「かなり強い壁なのでしょうね……ですが、決して壊せないわけではありません! 『神滅槍』ッ!」
岩の壁へと向かっていく私達に連なり、光の槍が形成される。
それを尻目に、『仮神翼』は止まること等知らないとでもいうように壁へと向かい、あと数メートルで激突する、その瞬間。
私達がそれにぶつかるよりも前に、槍が岩の壁へと食い込んでいった。
『仮神翼』の速さも加わり、限界を超えた威力を手に入れた『神滅槍』は火花を散らして更に奥へと突き進んでいく。
……しかし……
「まだ一歩、足りません……! この壁を突き破るには、今の『神滅槍』の四分の一の威力がまだ必要です……!」
「それなら、任せて!」
私が何かないかと策を講じる中、唐突にイレティナが私の後ろから飛び上がる。
「イレティナ⁉︎ 何を……」
「やぁっ!」
次の瞬間、その掛け声と同時にイレティナは、岩に向かって貫くように一撃の蹴りを放っていた。
まるで一本の槍のように身体を引き伸ばし、その爪先が突き刺さった瞬間。
そこから岩に次々とヒビが入っていき、岩が、粉々に砕け散った。
「なっ……⁉︎」
岩が砕けた先にいた敵は、驚愕の表情をして固まっていた。
それに対して、すかさずイレティナは目にも留まらぬ連撃を加える。
敵の身体が右へ左へと何度も残像を残しながら弾かれ、鳩尾が突かれた状態でイレティナの動きが静止すると。
「が……かっ……」
呻き声を上げ、敵はその場に倒れ伏した。