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第二百二十一話 破守

 ……ひとまずは、良い状況と捉えて良いだろう。

 このトウジョウアシナという人も面識こそ無かったが、今まで私たちを手助けしていた人間と言うなら、純粋に戦力が上がった訳だし。


「おい、立てるか?」


 アシナはそう言うと、見下ろす様な視線で下にいる私を見る。


「は、はい……。……うっ!」


 立ち上がろうとするも、半分ほど立ち上がったところで脇腹から痛みが走り、再び地面に両膝をついてしまう。


「フレイ! あんた、やっぱり傷が……」


 サラマンダーは心配げに衣服の赤く染まった部分へ体を近づける。

 先程の攻撃で受けた傷は確かにそこに残り、血は止まらずに流れ続けていた。


 ……しかし、傷自体は浅い。肉こそ削れてはいるが骨までは見えていないのだ。

 脇腹部分なら尚更、胸や腰なんかにあの一撃を喰らっていては危なかったかもしれないが、体への負担は少ない。


「大丈夫です……。『絶対聖域(ホーリー・グレイル)』で身を守りながら進んでいくんですから、身体のスピードが落ちても問題は何も有りません」


 そう、このまま進んでいけば、何も問題は無い。

 ウンディーネは少し心配そうな顔をしているが、私が歩いていけば良いだけなのだから。


「……フレイ、早速だが作戦だ。この()()()()を今すぐ消せ」


「……え?」


 アシナは私に向かって、真面目な顔をしてそう言った。


 今……私の聞き間違いでなければアシナはこの壁を消せと言った。

 私たちの防御の要であり、今現在確実に進んでいるこの壁を……。


「……な、何言ってんのよ⁉︎ 今の話聞いてなかったわけ⁉︎ フレイは傷負ってて、まともに体動かせない状態なのよ⁉︎」


 サラマンダーは正気を疑うかの様にアシナの方を向き、裏返るほどの声を上げる。

 それに対してアシナは落ち着いた調子で。


「二つに分けて説明してやる。まず、今あいつらと戦っているのはフレイだけだ。壁があるから、お前らはただのカカシになっちまっている」


 そう淡々と、みんなを見回しながらそう言った。

 誰も彼の言葉に頷きはしなかったが、それと同時に首を振ってもいなかった。


 否定は出来ない、と言うわけだ。


「そして、二つ目。もしさっきみたいに予想できない事態になったらどうする? フレイはリソースをフル活用できない。赤髪のてめえはまともに技を打てない」


「で……でも、私もウンディーネちゃんも、サラマンダーちゃんだっているよ? 

 六人もいるんだから、みんなそれぞれ助け合えるよ!」


「刀、スライム、生身。全部が全部その三つで対処できると思うなよ。現に、さっきは俺がいなかったらどうしてたつもりだ? あの時、誰もまだ動いちゃいなかったぞ」


 アシナは皮肉を混ぜる様に言う。

 その言いぶりが、少し鼻についたが……。

 

 しかし……全て事実だ。確かに予想外の攻撃を受けたときに行動出来なくなってしまっては困る。


「……その通りだと、思います。みんなそれぞれ、一人で戦えるほどのポテンシャルは持っています。

 それに、この空間は私たちにも好都合ですから」


 屋内である、と言うことが私達に良い方向へ働いているのだ。

 壁や天井を上手く使って戦える……今までの厄介で、相手に有利だった戦いとは違うのだ。


 皆も納得がいったのか、戦闘の準備を始めていた。

 ヴィリアは刀を抜き、ウンディーネも肉体の先端がすぐに飛び出せる様にと尖り始め、イレティナは何やら自分の袋を探っている。


「……お前、せめて止血はしておけよ。手負いはお前だけだし、そう気をかけてはやれないからな」


 そう言いながら、アシナは私にガーゼの様なものを差し出す。

 私はそれを受け取り。


「ありがとうございます。……では、行きましょう」


 そのガーゼを、しっかりと引きむすんだ。

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