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第二百二十話 疑わしき

「え……な、何が起きて……?」


 私は、唖然としていた。


 マントの男は、既に握りしめることのできなくなっていた拳からスルリと抜けて下に降り、大男の物だった肉体はそれに連なってバランスを崩し、音を立てて、仰向けになって倒れる。

 

 その時、ちょうど倒れた地面から何かが焼ける様な音が聞こえ、下を見ると。

 

「……床が……」


 大男の身体が倒れた床は金属が赤白く輝き、形を歪なものに変えていた。

 床から溢れ出す煙の様なものは、身体を包む様である。


 床の金属が熱せられて、溶けたのだ。

 しかし……一体どうして?


 心当たりは……あのマントの内側で一瞬煌めいたあの光。

 あれが見えた後に、大男の首が……。


「……どうした、こいつは倒したんだ。これで行けるだろう」


「待って下さい! 貴方の事を、私達はまだ全然知っていません! まずは、貴方が何者なのか教えて下さい!」


 私はすぐに行ってしまおうとするマントの男を呼び止め、抗議の言葉を述べる。

 サラマンダーも同じ気持ちだったのか、男に向かって不満げに。


「そうよ、サツキを助けたいって言うあんたの気持ちは分かったけどね、さっきの攻撃といいさっき出していた綿といい……不気味に思うわ。あんたを完全に信用するにはそこを教えてもらわなきゃ」


「そうは言うが、さっさと言った方がお前らのためだと思うが?」


「そう思うなら、お前は私の刀の錆になるが?」


 サラマンダーが友好的な雰囲気で会話するのに対して、ヴィリアはかなり攻撃的な態度を取っていた。

 だが……それは同時に、きっぱりと言い切っていると言うことでもある。


 私達が彼を信用するにはまだ証拠が足りない。

 それは事実だし、私だって彼が言わないと言うのなら……。


「……ちっ、敵が目の前にいるっつぅのにこんな舐めた様な態度を取りことになるなんてな……。

 分かった、だが手短にだ」


 壁越しにこちらを見る敵を嫌そうに横目で見ながら、男は話し始めた。


「さっきも言ったが、俺の名前は東條芦名。評議会の人間……それで、スキルは『無限』。

 このマントの中だけに効くスキルでな。何でもしまえるし、作れるし、壊せる。さっきの攻撃もレーザービームみたいなもんで……って、レーザービーム分からねえか」


 ……要するに、あのマントがスキルそのものという訳か……。

 特に、隠す様な気もなさそうだし、信用しても大丈夫か……?


「一つ、きいてもいいかしら?」


 ウンディーネがアシナに対して質問をする。

 アシナの方も煩わしそうではあったが肯いて承諾した。


「あなた……どうしてそんなにサツキを助けたいの?」


 その言葉を聞いた瞬間、アシナの表情が変わった。

 疲れげではあったものの、どこか飄々としていた態度から一変して、脂汗をかくように黙ってしまう。


「……」


 場の空気が一転して、緊迫とする。

 ウンディーネは疑うように睨みつけ、ヴィリアは既に片手を刀の柄に触れさせていた。


 これは……まずい。


「……ま、まあいいじゃ無いですか! 最初に言った私が言うのもなんですが、彼は切り札とも思えるほどのスキルを教えてくれたんです。だったら、多少信用しても良いと思いませんか……⁉︎」


 そういいながら、私は疑わしく思っている二人にアイコンタクトを試みる。

 二人へしっかりと目を見据え、ここは私を信じて欲しい、と。


「……まあ、それもそう……だな」


「ええ……折角新しい戦力になってくれるんだもの。私も信用するわ」


 若干まだ気になってはいる様だったが、二人とも承諾してくれた。

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