第二百十九話話 一撃で片付ける
「あ、貴方は……⁉︎」
どこから現れた⁉︎ 何かのスキルか……
いや、それよりも、今私を助けてくれたのか? ……こんな場所で、見知らぬ人間が?
……心当たりもないし、ここにいると言う事はどこかの王となる。一体この人は……。
そんなことを考えていると、男はこちらへ苦々しげな表情を向けて。
「……おいおい、まさか知らないって事は無いよな? 参ったな……それだと、サツキが助かる前に俺があんたらに殺されるかもしれないわけだ……」
マントの男は、目の前で大男の拳を受けているにも関わらず、こちらへ余裕を持って話す。
あのマント……何か見覚えが……。それに、サツキが、助かる……?
……まさか……
「まさか……貴方が、イツを助けた方ですか⁉︎ 私達がここに来れる様に、あの機械を渡した……!」
「ちゃんと覚えてんじゃねえか。そうだ、その通りだ。俺もお前らの仲間だ」
マントの男は少し安心した様に強張っていた表情を緩ませる。
仲間……! サツキを助けたいと思っている人が、もう一人いたんだ……!
「しかし、ひとまずは……てめえを始末してからじゃ無えと話は進まねえな」
そう一言呟くと、マントの男は大男の目の前から飛び上がる様にして離れて私の手のすぐそばに立つ。
大男は、何も喋らずに歯を食いしばってマントの男を見るが……。
「腕が……無い……?」
私はその光景が目に入り、唖然として固まってしまう。
私を攻撃しようとして、マントに阻まれたあの腕は拳から肘にかけて、全て最初から何もなかったかの様に消えていた。
上を見上げると、男の首あたりから一枚のマントがひらひらと揺れ、裏側には、一度見たことのある煌めきが漆黒の中に漂っている。
この……マントのせいなのか?
そう考えれば先程大男があれ以上攻撃しなかったことにも合点がいく。あれ以上腕を突っ込んでいれば、肘よりも上の部分も、まとめて消えることになっていただろう。
「あまり時間はかけられねえんだ。悪いが死んでもらうぞ」
そう言うと、マントの男は再び大男に向かって飛び上がり、次の瞬間には彼の頭上にいた。
何も言わずに自身のマントを大きく広げ、大男を上からその漆黒で完全に飲み込もうとする。
しかし。
大男はその一瞬を見計らって、マントの男が彼を飲み込むよりも先に、その頭を片腕で掴み取る。
「___ぬ、あ、あぁあああ!」
全力を振り絞るかの如く白目を剥いて顔に血管を浮かび上がらせ、拳へとその力を送り込んでいく。
消されるよりも前に、頭を潰して殺す気か……⁉︎
「っ! 『神滅___」
彼が殺されるよりも前に、あの大男を殺さなければいけない。
そう思い、脇腹の痛みを堪えながら、突き刺そうとしたその時。
「『無限』」
そうマントの男が呟くと、一瞬マントの中の星の様な煌めきが、一つ赤く光る。
次の瞬間には、大男の頭は吹き飛んでいた。