第二十一話 偽の姿
「あっフレイ!待ってよー!」
私は走って行くフレイを追いかけて行く。
フレイは曲がり角を曲がり、私も見失わないようについて行くが。
「あれ……?フレイどこに行っちゃったんだ……?」
突如としてフレイの姿を見失ってしまった。
「いきなりどうしちゃったんだろ……?」
立ち止まり考えていると、後ろからウンディーネが走って追いついて来た。
「はぁ……全く、人を置いて行かないでよね……
走るのには慣れていないんだから……」
ウンディーネが息を荒くしていると、スラ吉が出てきた。
「『フレイを見失っちまったんなら、先に宿屋へ行ったらどうだ?
別に困るこたぁないだろ?』」
うーん……大丈夫かなフレイ……
ここは一つ、フレイを信じて一度宿へ向かうか。
「宿はひとつだけだしね。宿へ直線で帰ろう」
そう言い、私は二人を『収納』する。
確か宿屋はサクレイを買った店のすぐ隣だったはず。
走って行こうかな。
今度はスキルを使用し、森を猛ダッシュした。
さっきはうっかり使い忘れちゃったけど……
今度からは走ろうと思った時にすぐ発動できるようにしておかなきゃ……。
そんなことを考えていた時、ふと声が聞こえてきた。
「……うだ?……もあいつ……コボ……したか?」
「……え、も…ろん……様、いえ……ウラ……んで?」
何故だか気になり、私は足を止め、木の影に隠れて聞いた。
「ほら、今日の分の金だよ。これで明日もあいつを殴り倒してくれよ?」
若い、まだ声が変わる前の男の子の声が聞こえる。
いや、口調を除いて聞き覚えのある声だ。
「ええ、勿論ですよ。へへへ……」
男の声も聞こえて来る。
まさか……まさか……!
私は胸を鳴らし、ゆっくりと古びた木の影から、気づかれないように、
『気配遮断』も使って覗いた。
そこには、青年に札束を渡しているリュウラン君がいた。
「リュウラン……君……?」
私は驚いて声が漏れてしまう。
「っ!おい、さっさとそれ持っていきやがれ!」
リュウラン君は森の出口へと指を指し、青年を逃す。
青年が完全にその場から消え、私が『気配遮断』を解くとリュウラン君は平然とし。
「……バレちゃいましたか」
それを一言、微笑をしながら呟いた。
普通の子供なら焦るはずだ。なのに、なぜ……。
「何で……?ソウズ君は……友達なんじゃなかったの……?」
私は立っていられなくなり、膝をついて途切れ途切れに訊く。
「いえ、だって彼僕の友達じゃなくて玩具ですもん。
いじめっ子達から守ってくれる親友。
その親友にある日突然突き放され、絶望の底に突き落とされる……。
その時の表情が見たいんですよ、僕……」
リュウラン君は笑みを一層強め、それでも淡々と語る。
玩具……?
全部リュウラン君が作っていた物だった……?
私は作り物の上で暴れて……。
「ああでも、お姉さんの行動には驚きましたよ。
二十数年繰り返して、いじめられている子供を助けたのは貴方が初めてでしたから」
二十……数年?
「君は多く見積もっても15歳が良いとこだ。リュウラン君、それは一体どう言うこと?」
私は顔を上げ訊く。
「リュウラン?誰ですかそれ?そんな人間どこにもいませんよ?
僕は……」
その瞬間、リュウラン君の姿がグニャリと歪む。
文字通り、身体が元の形を変えて行く。
そこには、先ほどと比べ明らかに体格の違う、あの姿をそのまま大人にしたような姿が見えた。
「俺はなあ、タケルさ!このフェアラウスの新たなる王!スキル『変化』を持つ転生者だよぉ〜!」
タケル……?そうか!
「お前は……!」
「そうさ!コウキの野郎の友達だよ!お前についてはあいつから聞いているんだ!
スキル、見た目、性格、体格!コウキが倒されたって聞いた時には驚いたぜ。
だが、島全体のマナを俺のスキルで『変化』させちまえば『万物理解』は使えねえ!」
だから『万物理解』が機能しなかったのか……!
マナが得てきた情報を聞き出すスキルが万物理解!
書き換えられてしまったら聞き出せるわけがない……!
私はなおも言い続けるタケルに向かって立ち上がる。
「だが!どちらにせよマナだ!他のスキルは使える!サラマンダー!」
私は刀を抜きタケルに斬りかかる。
「任せなさい!マナをありったけ使ってやるわ!」
高速で近づき、袈裟斬りを喰らわせる。
「『精霊剣技・爆炎円刃』!」
それと同時に、タケルを囲むようにして炎が激しく燃え上がる。
「ぐあぁぁあぁぁ!」
タケルは炎の中から姿は見えないが、叫び声を上げる。
しかし。
「……なーんちゃって♪」
突如、炎が先端から輝き出しみるみる消えて行く。
「なっ……!」
驚愕で隙を作ってしまい、脚で私は蹴り倒されてしまった。
「ぐぁっ……!」
間を作らず、タケルは私の頭を踏み、動けなくする。
「ばっかだなあ、お前。俺のスキルは変化させるスキルなの。
炎程度マナに還せるに決まっているでしょ。」
私が踏まれながら辛うじて上を見ると、タケルは心底バカにしたような顔をしていた。
「そういやお前、それ精霊じゃん。気づかなかったわ……
あ、あれはただ良心でやってやっただけだからな。
お爺ちゃんは嘘だけどよ。」
私はそのタケルの感情に怒りが湧き、叫び声を上げた。
「ぐっ……タケルううぅぅぅぅ!」
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