第二百十六話 洗いざらい
そう思い、チラリと男の方を見ると、男は再び怯えるように顔を引きつらせ。
「ひっ! わ、わかったよ。話せば良いんだろ、話せば⁉︎ だ、だから、がふっ⁉︎」
壁に固定されていた男の体は拘束を解かれて地面に勢いよく倒れる。
話しやすい様に解除はしたが、いつでも首を跳ね飛ばせる。男だってそれは重々承知だろうし、これくらいはいいだろう。
「命乞いはもう結構です。殺しはしませんから、洗いざらい全部吐いてもらいますよ___」
*
男の話した内容はこうだった。
まず、この評議会という場所について。
王が属しているというのは以前聞いた話だったが……それ以上に、信じられない事が話された。
この評議会に属しているのは、大陸のほとんどの王だという。
私達が倒した王たちを除いて、評議会に所属していない王は精々四、五人。
その中でもある程度広い国を持っているのは一人のみで、残りは全員小国。
……つまり、ほぼ大陸全土が彼らの手の上に握られているのだ。
一体どんな手を使ったかは分からないが……サツキですら彼らの方に引き込まれてしまったのだ。
男も王だったらしく、様々な他の王の話を聞いたらしい。
愛するものを人質にとられて、だとか、力の差を見せつけられて、だとか。
中には説得が可能にも思える王もいる様だが……今はとてもでは無いが時間が足りない。
やはり、見つけ次第口封じをする……という方針に変わりはなさそうだ。
「……それで、終わりなのかしら?」
「そんなわけないだろう。きっとまだ隠していることがあるぞ」
情報に満足いかなかったウンディーネとヴィリアは、疑う様な目で男を見る。
男は慌てた様子でまくしたて。
「も、もちろん話す! 隠す気なんて無い! ……そ、そうだ! お前らの探しているサツキの事を話そう!」
「!」
サラマンダーもウンディーネも私も、その言葉を聞いて男の方へ意識を集中する。
この男……やはりサツキの事は耳にしているのか?
「多分知っているとは思うが……あの女は、もうこっち側の人間じゃねえ」
「……どういう事ですか?」
こっち側の人間じゃ無い……? それってまさか……
「何故だか、洗脳が解けちまったんだよ。それで今はここで暴れていやがる」
「嘘……⁉︎」
サラマンダーは信じられないとばかりに声を上げる。
しかし、その声には喜色が混じっている様に聞こえた。
ウンディーネも、黙ってはいたものの、安心した様な笑みを浮かべている。
良かった……これなら簡単にサツキを助ける事が……!
「……あれ、でも、だったらどうしてサツキは帰ってきてないんですか? こんなところで憂さ晴らしに暴れる人間では……多分、無いと思いますけど」
そう言えば、多くの敵と戦うのを覚悟してきたはずなのに、全然敵に会わない。
百以上王がいるというのなら尚更だ。こんな事が連続して起きてもいいはず……。
「……副議長が、奴にご執心でな。全勢力を使って、かれこれ七日間足止めしていやがる」
「副議長……?」
「シルクハット被った嫌味な野郎さ、ホークアイ、っていう奴だよ」




