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第二十話 精霊ウンディーネ

「この野郎っ!」


 後方から拳が飛んでくるが、手で抑えそのまま握り潰す。

 先程まで武器として使われていた骨はバキバキと音を立てて折れていく。


「うわあぁぁ!」


 相手は痛みに悶え、叫び声を上げた。


 私はそれを投げ飛ばし、サラマンダーが宿った刀を構える。


 それを見た周囲はざわめき出す。


「あいつ剣構えたぞ……!」

「流石にやべえって!みんな逃げろー!」



「サラマンダー、流石に斬るのはまずいと思うんだけど……」


 私が小声で訊くと、サラマンダーは刀を一層赤く輝かせ。


「大丈夫よ、任せておきなさい!」


 じゃあ遠慮なく……!


「『精霊剣技・炎煙心綺楼(サラマンダーブレイズ)!」


 私が刀を振るうと、辺りが一気に燃え上がる。


「うわああ!燃えるううぅぅ!」

「熱い!熱いいいぃい!」


 炎に巻かれた子供達は叫び声を上げる。


「馬鹿ねえ、全部幻影なのに。まあ、いい見物にはなるんじゃないかしら?」


 サラマンダーは嬉々として言うが。


「何言ってるんですか!早くこの子を連れて行きますよ!」


 フレイは男の子を持ち背に背負う。






「お姉ちゃん達ありがとう!僕、友達に虐められちゃっていて……」


 私達は人の目に当たらない林の近くまで逃げてきた。

 しかし、あそこまで一人を大勢が囲むって言うのも異常だよな……。


「いつもあんな風にいじめられているの?」


 私はしゃがみ、目線を合わせて訊く。


「いや、友達がいて守ってくれるんだけど……」


 男の子が少し困った顔をして指の先をぐるぐる回していると、林の奥から人影が見えた。


「あ、ソウズ!どうしたんだ?その傷、誰にやられた!?」


 こちらに来る人の姿は、木製のバケツとタオルを持ち、青い髪を後ろに一本で結んだ男の子、リュウラン君だった。


 男の子のところまで来ると、水で傷を拭き始める。

 あらかた拭き終わると、一息ついて立ち上がり、私たちの存在に気付いた。


「あれ、お姉さんとフレイちゃんじゃないですか!一体どうしたんですか?」


 リュウラン君が驚きながら私達に話しかける。


「あれ?王様とお姉ちゃん達知り合いなんむぐっ!?」

 

 男の子が何か言おうとした瞬間、リュウラン君がいきなり口を押さえた。


「な、何してんの?」

 

 私が半ば動揺しながら訊くと。


「い、いえ。僕とお姉さん達が知り合いだって言う事を言っていただけですよ、はははは……」


 奇妙な笑顔を浮かべ、リュウラン君は話した。


「そう……この子、ソウズ君だったっけ?ソウズ君が17歳くらいの子達に囲まれていたんだよ。

 バット持っている子もいたし……」


 私が見ていた事を話すと、リュウラン君は深刻そうな顔をし。


「そんなことが……。ソウズ、詳しく説明してくれないか?」


 ソウズ君に向き直り、聞き始めた。


「うん、僕、一人で釣りしてたんだけど、そこに皆がやってきて、ムカつくから殴らせろ、って……」


 そんなことが……


「なんですかそれ!?理不尽過ぎますよ……!」


 フレイは目を見開いて怒っていた。


「……わかった。お姉さん、フレイちゃん。僕が何とかしますからもう大丈夫です」


 ……こんな小さな子供に任せて良いのだろうか。

 でも、目は最初にあった時とは違う。

 ……任せてみるか。


「分かった。私達は別に用があるから、任せたよ」


 私がそう言うとフレイは驚いたようでこちらをばっと向く。


「サツキ!?」


「やるべき事は幾らでもある。行くよ」


 そう言って、私は服を翻し街の方へと向かった。





「サツキ、やるべき事って言うのは何なんですか?」


 フレイは首を傾げて訊く。


「マナの引き出し方さ。例の機械を実用化するために精霊達に見てもらう。

 ただ、サラマンダーは……」


 私は手に持ったサラマンダーへ目を向ける。


「ん、何よ?」


「ちょっと機械とかをいじるのは難しそうだよねえ……」


 私が手も足もないサラマンダーに半分笑いながら言うと、突然サラマンダーが暴れ出し。


「何よ何よ!そんなふうに言っちゃって!

 じゃあウンディーネに任せておいたら!」


 そう言うとサラマンダーは鞘に戻っていってしまった。


「じゃあ……『収納』!」


 空間に穴が開き、そこからウンディーネ、もといスラ吉が出てくる。


 地面に顔を打ち付けてしまい、顔をさすりながら起き上がる。


「いったいわね……。勝手に人を仕舞っておいてこの仕打ち……?」


「申し訳ないけど、ちょっとこれ見てくれない?」


 私はそう言いながら、機械を渡す。


「……何よこれ?マナを身体から引っ張り出すの?

 悪趣味ねぇ……もっと良いデザイン考えなさいよね……。

 じゃあ、部分部分に装備をつけるようにすれば良いんじゃない?」


 ウンディーネは手に持ちそれの中に液状の指を入れていじりながら提案をする。


「部分部分ね……どうやってやるのさ?」


「スキルを使うのとおんなじ要領よ。構造は割と簡単だったから改造したし、やり方なんてすぐ分かるわ」


 感覚で分かるってことか……


「フレイ、これでどうにかなるね……」


 私がそう言い、フレイの方へ向くと、フレイは不安そうな顔をしていた。


「……フレイ?」


「い、いえ。大丈夫です。これでこの島でできる事は達成しましたね。

 サクレイでも食べに行きますか?」


 フレイは笑顔で私へ返事をしたが、いきなり走って行ってしまった。

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