第二百一話 正体不明の協力者
「え……⁉︎ フ、フレイ、それ本当?」
ウンディーネは目を見開いて驚く。
答えようとも思ったが、口を開きかけたところで私の動きは止まった。
これは推測に過ぎない。私がこれ以上その内容を並べても、ボロが出るかもしれないだけだ。
一々過程を説明するよりも……その答えを見た方がはるかに早い。
そう思い、私はイツの顔をじっと見る。
イツは先程から顔を下に向け、沈黙を続けていた。一体それがなにを意味するのか……それ次第で、私の次の気持ちは大きく変わるだろう。
私もウンディーネも、その場で押し黙ってイツの方を見る。
誰一人言葉を発さず、長い、長い圧するような時間が続いた後、イツは俯けていた顔を天へと向けて。
「……はっは! 参ったなこりゃ。まさか、良い返事どころかテスト自体を見破られちまうなんてな」
やれやれと言った感じで額に手を当て、首を左右へと揺らす。
「ってことは……」
「ああ。ほれ、これだよ」
イツは自分のズボンの横にある袋をまさぐると、その中から拳大の四角い物体を取り出す。
物体は、立方体の形状を保ち、面の中心に微かに輝く紫色の光を発していた。
そこから四方に線が浮き出て、立方体を八つに区切るような形になっている。
これがあれば、サツキを……!
すぐさま私はその立方体へ手を伸ばしたが、その瞬間にイツがそれを少し退けて、私の手は空振りに終わる。
「……でもな、さっき行かない方が良いって言ったのは本当だ。
サツキの攻撃こそ多少避けれたが、あそこにはとんでもないスキルを持つ奴らがごまんと居る」
「……では、せめてイツの身に何があったのか、教えてはくれませんか? その傷がサツキのせいで無いのなら、一体誰がどのような力であなたを瀕死の状態にまで追い込んだのかを……!」
私がそう言うと、イツは少し考え込むようにして。
「……いいぜ。……と言っても、あまり良い情報にはならないだろうな。なんせ、一撃でやられちまったからよ」
イツは悔しげな表情をして言う。
……一撃……⁉︎ 骨も折れていたし、かなりの重傷だったのにあれが一撃だと言うのか……⁉︎
「光みてぇな速さで俺を横から蹴り飛ばしやがった。意識は朦朧としていたが……あの声は女だ。
しかも、その後俺を何か光るモンで始末しようとしていたぜ」
「光る物……? と言うことは、その蹴りはスキルでは無いのですか……?」
「さあな。だが、別の奴が止めに入って、俺はなんとか死ぬのは免れた。そしてそいつは、連れてこいって言って俺の懐に、これを忍び込ませたんだ」
そう言って、イツは立方体を手の中で回す。
「その人は……味方なのですか?」
「可能性は高い。でも、あんま期待はしないほうが良いぜ、なんせ評議会に入ってんだから、どっちにしろあっち側だ」
……そう言えば、連れてこいって……誰を連れてくるんだ? それにイツは意識が朦朧としていたと言う。
その人がイツをここに呼び寄せたんじゃ無いのか……?
つまり、私達を待っている……?サツキを助けたいと思っている私達を……?
……評議会にも、サツキを助けたいと思っている人がいるのか?