第二百話 隠し事
「……!」
そこまで……危険な場所なのか。
……ある程度は予想していたが、なるほど、サツキが敵になるのはやはりそれほどの危険性があるのか……?
「まぁなんだ。遠回しに言う様で悪かったんだけどよ、俺の言いたい事は行かない方が良いってことだ。
サツキをどうにかしたいって気持ちもわかるがな、お前らが死んだら意味無いだろ?」
説得する様な言葉ではあったが、イツは少しおどけた様な言い方で目を回す。
しかし、ウンディーネは……。
「……それは無理な話ね」
イツの目を見ずに、投げる様な物言いで言葉を返す。
「そいつはまた、どうしてだ?」
おどけた様な姿勢を崩さずに、イツは首をウンディーネに近づけて聞く。
それに対して、これと言った特徴的な反応もなくウンディーネはイツをちらりと見て。
「私達はサツキを助けるためにここまで来たのよ。ここまで来たんだから、サツキを助けなきゃ___」
「じゃあ、あんたはその理由が無けりゃ助けないのか?」
イツはウンディーネの言葉に水を差し、何気ない様な口ぶりで言う。
しかし、その言葉には確かに彼の意志が込められ、ウンディーネに対してなにかを抗議しているように感じられた。
「……何ですって?」
「『助けなきゃいけない』って言おうとしたんだろ? そのいけないって言葉、まるで消去法でやっているみたいじゃねえか」
ウンディーネはイツのその言葉を挑発と捉えたのか、眉を潜めるようにしてイツの方を睨み付ける。
「……そんな訳ないでしょ。ただそう言う言葉を使っただけよ」
ウンディーネはイツが私達のことを嘲っているように思っているのかもしれない。
確かに、イツのさっきの言葉は一側面としては侮辱しているように聞こえるかもしれない。
……でも、イツは特に意味もなくそんなことを言う人間じゃない。
イツとサツキ、それと私の三人であの盗賊の頭を倒した時も彼はサツキにそれが助ける手立てだと言われて挑発をしていて……。
「イツ、さっきの言葉はどう言う意味ですか?」
「……おいおい、俺はなにもお前らをキレさせたいわけじゃ___」
「分かっています。ですから教えて下さい。……いえ、やっぱり、自分で言った方が良いですよね。
イツは、今の私たちの気概では評議会に行ってもすぐに殺されるだけだと、そう言う意味で言っていたんですよね?」
イツの言っていた言葉には何か含みがあるようだった。
それに、それほどに危険な評議会へ行って、何故イツがあれ程度の怪我で帰ってこれたかと言うのも不自然だ。
きっと、何か重要な物を得て何とか逃げおおせた。
だったらあるはずなのだ。
「……持っているんですよね? 評議会へ移動するための物を……」
「……」