第百九十九話 全容
「……詳しく」
僅かに身を乗り出し、私はイツの話を聞く姿勢に入る。
もしかしたら、評議会についてもある程度の情報を知れるかもしれない。だったら、聞くしかないだろう。
「ああ、……あの時、俺はギルドの仕事も終わって街中をブラブラしていたんだ。
そしたら、何処からともなく黒いローブを被った奴が現れて、一千万オウルはくだらない札束見せて、ある場所に潜入して欲しい、と言うんだ」
「『奴』……ですか?」
「報酬は後で払うって言われてな、結局名前はわからなかった。
そん時は夜で、余計姿も見えなかったし、声も、男にしてはやけに高いし、女にしてもなんかそれっぽくないと言うか……だから、今更探そうにも見つからないと思うぜ」
イツはやれやれとでも言うように肩を竦めてため息をつく。
だが……『奴』、というのはかなり怪しい。
イツにそんな依頼をした上に異常なほどの外見の特徴の無さ……頭の中に入れておいた方がいいかもしれないな。
「それで……?」
「おう、そいつが路地裏に入って、ついてこいっつうからよ、ノコノコとついていったら……気づいた時にはあの暗い中だぜ」
つまり……その路地裏が、評議会へ繋がっているのか……⁉︎
だったら、今すぐにでも行ってサツキを助けないと……!
「そこはどこですか⁉︎ どこの国でどこの街で、どの通りですか⁉︎」
身を乗り出してイツの顔に一気に近づくと、驚いた様子でイツは後ろへ転がる様に引く。
「うぉっ……! 待て待て! まだ話は終わっちゃいねえぞ!」
「あ……すいません、私とした事が……」
イツに制されて、私は焦りすぎたと思いながら身を戻した。
「ふぅ……それで、しばらくは適当に怪しそうな部屋とかに入ってめぼしいものを探したりしてたんだが何かに触れた拍子に部屋が真っ赤になってビービーってなってよ……」
……恐らく、防犯のアラートに引っ掛かったのだろう。
「仕方ねえから逃げようとしたんだ。で、走っていたらいきなり……あいつが現れたんだ」
「あいつって……まさか……」
「……そう、サツキだ。かなり焦った様な様子だったからてっきり逃げているもんだと思っていたら、いきなり訳のわからないこと言い出して俺に攻撃してきたんだ。前とは比べ物にならないほどのスキルでな」
……やっぱり、サツキは評議会の洗脳に囚われているのか……?
イツもあそこまで深傷を負っていた。つまり、サツキが私たちに容赦なく攻撃してくる可能性は十分にあると言うことだ。
「その傷も……サツキに?」
「いいや、これはまた別のやつだったが……。とにかく、俺が言いたいのは今のサツキに会いにいくっていうんなら覚悟をしておいた方がいい。……腕の一、二本無くすことをな」