第百九十八話 忠告
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暫くもしないうちに、話し合いを始めた。
それも、大量に盛られた果実を囲んで。
「それで……これからどうするの?」
ウンディーネは一口大の大きさの果実を手に取って私に聞く。
「そうですね……サツキの居場所がわかれば良い訳ですから……ひとまず、評議会の関係者でも探すのはどうでしょうか?」
評議会の関係者なら、王を探せばきっといるだろう。
近くの国まで『仮神翼』で行って、多少強引にでも聞き出していけばきっと今日だけでも十数カ国は行けるはず……。
「待て、お前らサツキのこと探してんのか?」
唐突に、イツが私の方へ驚いた様な顔をして問う。
しかし、それに対してウンディーネが。
「その前に、あなたの名前を聞いても良いかしら? 随分フレイとサツキを知っている様な口ぶりだけど……」
「ああ、悪い悪い。さっきの具合からしてあんたもフレイの仲間なんだろ?
俺はイツ。元盗賊だが、ギルドの集まりで今は潜入捜査だとかそういう事をしている。んで、フェアラウスに行くって言ったサツキと別れたモンだ」
疑いをかける様なウンディーネの突然の質問だったが、イツは予想していた様に易々と簡潔に答える。
ウンディーネはイツの自己紹介に加え、上っ調子な雰囲気に少し怪しむ様な視線を向けたが、私の目をチラリと見て。
「……本当に?」
「……」
ウンディーネの探る様な視線に、私も後ろめたい事自体は特には無かったが、緊張して何度もこくこくと頷いてしまう。
しかし、ウンディーネは私の言葉を信じたのか、一度頷くとイツの方へ姿勢を戻し。
「疑う様で悪かったわ。私はウンディーネ、貴方の言っていたフェアラウスの精霊よ。
貴方とはちょうどすれ違う形になったけども、仲良くしましょう?」
礼儀とばかりに、自己紹介をイツに返した。何となくセリフがわざとらしい気もするが……。
……まあ、信用してくれたという事ならそっちの方が良い。心の内は分からないが、今は協力し合うべき仲間だろう。
「……あ、そうでした。それでイツ、さっき言っていた事は……」
「お、そうだったな。……なんだ、お前らがサツキとはぐれたっていうんなら、今は探さない方が良いと思うぜ」
イツはそっぽを向いて言いづらそうに、忠告する様な声色で言う。
探さない方がいい……? 今更そんな事は言っていられない! あと二日しかないのに……!
「ど、どうして___」
「俺はな、評議会の奴らの根城に行ったんだよ」
そう、イツは重々しげに言う。
イツの言った言葉に、辺りが息を呑む様な雰囲気に包まれる。
……イツが、評議会に?
と言う事は……サツキにあったのか?