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第百九十六話 炎の精霊

「「サラマンダー!」」


 私とウンディーネはその姿を見るや否や駆け出した。


 マナティクスは私達の方へ満足げな顔を向け。


「良くやったな。確かに、治したぞ」


 そう言い、サラマンダーを私達の前に差し出す。


「……」


 息を呑んでマナティクスに握られるサラマンダーを見つめるウンディーネに、私は笑みを浮かべて。


「ウンディーネ、受け取って下さい」


「……い、いいの?」


「……きっと、今サラマンダーを受け取るのに一番相応しいのはウンディーネですから」


 私はそう言って、ウンディーネに笑って見せた。


 ウンディーネは若干狼狽しながら、どの様に受け取れば良いかなどと考えているのか、多種多様に手を持ち替え、跪こうとしたり横に手をやろうとしたりした。


 やがて、手の位置が決まったのかマナティクスの握り手の下から支える様にして手を置く。


 それに伴ってマナティクスがウンディーネの手の上にサラマンダーを握る手をそっと置き、おもむろに放した。


「……」


 マナティクスの手が離れたそこには、確かにサラマンダーがいた。


 鈍く黒い光を放つ刀身と純銀に輝く切っ先、そして、それらの上を張り巡る燃え盛る炎の様な刻印。

 間違いなく、サラマンダーは完全に治っていた。……しかし。

 

「……動きません」


 どうにも、まるで動く気配が無かった。と言うか、さっきから一言も発していない。

 ……おかしい。


 うなじから冷や汗が出るのを感じながら、私は緊張気味に。


「マナティクス、もう一度聞きたいのですが、完璧に治ったんですね?」


「あ、ああ……完璧だ。あれほどの苦労をして置いて失敗するつもりは無い。むしろ___」


 マナティクスがそう言った瞬間だった。

 突如として、私の顔の下から赤く、暖かい光が残像を残して飛び出す。


「あははは! すごい! 本当に飛べちゃってるわ私! 自由に動けるし……サイコー!」


 そんな事を言って空中でクルクルと嬉しそうに飛び回る存在、私の手には既になく、疑いようの無い事実がそこにあった。


「サラマンダー! 治ったんですか⁉︎」


「そーよ! さっきまでのは気絶して……じゃなくて、ちょっとしたサプライズよ。……にしても、やっぱり良いわね! マナも充分に使えるし、ほんっとーに最高よ!」


 今までに無いほどの喜び様で、サラマンダーはなおも頭上で飛び続ける。

 私と同じ様にウンディーネもそれを嬉しそうに見ていたが、ふとマナティクスの方に姿勢を正し。


「マナティクス様……今回の件、ご協力頂いて改めて感謝___」


「いや、結構だ。礼はいらん」


 しかし、マナティクスはウンディーネがお辞儀をしようとした瞬間にそれを手で制した。

 

 ……やけに、暗い顔だけどどうしたんだ……?

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